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米中摩擦で加速?アメリカでの東アジア人差別

米国人に潜在的な恐怖感を与える中国の躍進。日中韓でいがみ合っている場合ではない

酒井吉廣 中部大学経営情報学部教授

ハーバード大学のアジア人差別問題

拡大Jorge Salcedo/shutterstock.com

 冒頭で述べたように、ハーバード大学がアジア系米国人を入試で差別したと学生団体が起こした訴訟で、マサツ―セッツ州のボストン地方裁判所は10月1日、判決を出した。「人種に基づくいかなる悪意を示す証拠はなかった」として、アジア系が厳しい基準で減点されたとする原告の訴えを退ける内容だ。「差別はなかった」というわけだ。

 これに先立つ1カ月前、ニューヨーク・タイムズ・マガジン(NYTマガジン)の9月1日号に、「Where does affirmative action leave Asian-Americans?」というタイトルで13ページに及ぶエッセイが掲載された。Affirmative Action とは、要するに「マイノリティー優遇措置」のことである。アジア人はアメリカでマイノリティーとしてこの措置を受ける権利があるかどうかというのが、問題の本質だ。

 NYTマガジンのエッセイはこの裁判を意識して、マイノリティー対象としてのアジア人の学生が、昨今この措置を受けていないと感じている不満について書いている。ここでのアジア人にはベトナム人等も含まれているが、メインは中国人と朝鮮人だ。

 日本人はこの手の問題には顔を出さない。留学生数が減っていることもあるが、ある日本人留学生支援者によれば、それは「恥の文化」があるためだという。優遇措置を受けていること自体を知られたくない、という気持ちが働いているのだという。さらに、日本人の留学生は、企業派遣、官庁派遣の割合が高いことも影響しているだろう。

 アメリカの大学における人種差別の歴史は長い。大学の多くは、政治・社会体制に迎合しており、正義のために差別をなくした大学はごく少数だ。このため、それと戦った学生の歴史も長く、裁判記録等も非常に多い。

 結局、この問題は、移民の国、そして奴隷制をしいていた国が今に引きずる問題のひとつなのである。原告の学生側は最高裁まで戦う準備をしているので、最終的な結論が出るまでの道のりはまだ長い。

子供の世界でも問題が……

 子供の世界でもこの問題が起こりつつある。

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筆者

酒井吉廣

酒井吉廣(さかい・よしひろ) 中部大学経営情報学部教授

1985年日本銀行入行。金融市場調節、大手行の海外拠点考査を担当の後、信用機構室調査役。2000年より米国野村証券シニア・エグゼクティブ・アドバイザー、日本政策投資銀行シニアエコノミスト。この間、2000年より米国AEI研究員、2002年よりCSIS非常勤研究員、2012年より青山学院大学院経済研究科講師、中国清華大学高級研究員。日米中の企業の顧問等も務める。ニューヨーク大学MBA、ボストン大学犯罪学修士。

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