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バイデンはウクライナ新興財閥の「屋根」か

脛に傷もつ父子を米民主党はどうする

塩原俊彦 高知大学准教授

 ドナルド・トランプ大統領に対する米国下院での弾劾のための審問手続きがスタートした。2020年大統領選でライバルとなるかもしれない民主党の有力大統領候補、ジョー・バイデン前副大統領を追い落とすために、トランプがその権力を使ってウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領とのバイデンの息子ハンターのウクライナにおける犯罪捜査を強化するように圧力かけたとされる問題などが審議される。

 このサイトの記事、「トランプ弾劾審議の源流はバイデン父子の腐敗問題」で指摘したように、バイデン父子がウクライナで「不正行為」に絡んでいたことは以前から知られていた。今回は、ウクライナにおいて父ジョーが悪巧みをする連中を守る「屋根」の役割を果たし、その「見返り」に息子ハンターがおこぼれを頂戴していたという構図を明確に示したい。

拡大ジョー・バイデン米前副大統領

政治家を「屋根」とする「オリガルヒ」

 ウクライナでもロシアでも、ソ連崩壊後、社会主義から資本主義への移行途上で、それまでの統治で重要な役割を果たしてきた国家保安委員会(KGB)、警察などの治安維持機関が混乱し、そうしたなかで身の安全を守ってくれる「屋根」が求められるようになる。組織犯罪グループ(マフィア)やKGBの後継機関などに近づき共謀関係を構築し、それまでソ連国家が所有してきた石油・ガスなどのさまざまの資産を奪取する動きが広がる。

 支配権を握る政治家と癒着してビジネスで儲ける、いわゆる「オリガルヒ」(新興財閥)も台頭する。政治家、マフィア、治安機関らが秩序を維持する「屋根」となり、そのもとでオリガルヒがカネを儲けてその一部を「屋根」に還流するのである。

 ウクライナの場合、2004年から05年にかけてのオレンジ革命で、米国政府が直接・間接に支援したヴィクトル・ユーシェンコが大統領になったものの、ウクライナは混乱し、親ロシア派とされるヴィクトル・ヤヌコヴィッチが2010年2月、大統領に就任する。

 公正な選挙が行われたかどうかは疑問だが、それでも民主的に選ばれた大統領であったことは間違いない。にもかかわらず、彼を再び米国の支援を受けたナショナリストらが武力で掃討する事件が2014年2月に起きる。その後、親米のペトロ・ポロシェンコ大統領が誕生する。この過程で、ウクライナ問題を担当していたのが父ジョーであった。

 権力の交代が権益配分に直結するため、オリガルヒらは政治家と癒着しつつ、自らの権益を拡大すべく腐心する時代がつづいたことになる。こうした国情を理解していれば、権力者を「屋根」とすべくすり寄る動きに冷静沈着に対処すべきであったのだが、バイデン父子はウクライナのかかえる「罠」にかかってしまったのである。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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