メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

情報操作 ディスインフォメーションの脅威 

まったく無知で無防備なままの日本

塩原俊彦 高知大学准教授

インターネットの普及で高まる破壊力

 ディスインフォメーションはいわば情報操作の手段の一つである。そう考えると、ディスインフォメーション自体は欧州にも中国にも日本にも古くからみられた。

 皇帝コンスタンティヌスが321年にローマ教皇シルヴェステルにローマ帝国の西半分を贈ると明記した文書、「コンスタンティヌスの寄進状」はその典型かもしれない。この寄進状が教皇の西欧所有の根拠となり、神聖ローマ皇帝も国王も諸侯も教皇から統治を委託されているだけの存在となる。教皇自体が支配するイタリア中南部があってもなんのふしぎもないという幻想がまかり通ることになるのだ。この場合、ローマ教皇の権威に敵対する勢力を手なずけるために虚偽の情報を活用したわけである。これが偽物であることは15世紀になって判明する。

 中国の孫子を読むと、敵を欺くことの重要性が書かれている。軍隊の行動特性や指針をしめした軍争篇で、「迂(う)を以って直(ちょく)となし、患(かん)を以って利となす」と指摘している。つまり、わざと遠回りをして敵を安心させて、敵よりも早く目的地につき、不利を有利に変えよというのだ。あるいは、有名な「始めは処女の如くにして、敵人、戸を開き、後には脱兎の如くにして、敵、拒(ふせ)ぐに及ばず」という言葉が地形における戦い方を書いた九地篇にある。最初は処女のようにふるまって敵を油断させ、そこに脱兎のごとき勢いで攻めたてれば、敵は防ぎきることはできないというわけだ。

 インターネットを通じて、迅速かつ安価に情報が世界全体に広がる時代に突入して、ディスインフォメーションはこれまでの以上の破壊力をもつようになる。だからこそ、

・・・ログインして読む
(残り:約1932文字/本文:約3864文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

塩原俊彦の記事

もっと見る