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タンザニア野球のスローガンは規律、尊敬、正義

野球人、アフリカをゆく(14)タンザニアの学校でついに野球が必須の競技に!

友成晋也 一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事

拡大決勝戦の応援席は地元チームの生徒たちで盛り上がった。

〈これまでのあらすじ〉
危険地南スーダンに赴任した筆者は、過去、ガーナ、タンザニアで野球の普及活動を経験をいかし、首都ジュバ市内に安全な場所を確保し、野球教室を始めた。初めて野球を目にし、取り組む南スーダンの子供たちとの信頼関係も徐々にできていく。試合ができるレベルになってくると、試合前に整列し、礼をする日本の高校野球の形も導入した。実は、こうした独自の「野球哲学」が確立されたのはタンザニア野球だった。

常夏の国タンザニアの甲子園大会決勝戦

 常夏のタンザニアは、12月も気温が軽く30度を超える。

 第6回タンザニア甲子園大会の最終日の午後。日曜日の青い夏空が広がるこの日、私は決勝戦を観るために球場のネット裏の一番見やすい客席の最上段にいた。

 もともとコンクリートで階段状になっているところに椅子を搬入し、観客席風になっている。最上段といっても4、5メートルくらいの高さだが、両軍ベンチから外野のフェンスまで球場全体を見渡せる。屋根で日かげになり、風通しもよく、居心地がいい。

 決勝を戦うのは、校庭を球場建設に提供した地元のアザニア校と、キリマンジャロの麓(ふもと)にあるサンヤジュウ校。両校とも過去に優勝経験のある強豪校だ。

 ネット裏はすでに応援する生徒たちで満員だ。カラフルな装いの生徒たちが、明るく高らかに声をそろえ、歌いながら盛り上がっている。数えきれないくらい挙げられる野球の魅力だが、その一つが「応援」だろう。

拡大ンチンビ事務局長のアイデアで造られたスコアラー専用席。グラウンドがよく見渡せる絶好の位置。
 タンザニア初の本格的な野球場で開かれた第6回タンザニア甲子園大会だが、2015年の構想段階では、ピッチャーマウンドのある規格サイズの野球場に、バックネット、ダグアウト、フェンスがあればよいと考えていた。ンチンビ事務局長は限られた予算の中で、観客席、事務所と倉庫がある管理棟、スコアラー席まで設けた。

 観客席ができて、観戦や応援の楽しさを人々は知った。野球の魅力がさらに浸透するだろう――そんなことを考えていると、大学生の高橋海輝(みつき)が元気よく階段を駆け上がってきた。アフリカ野球友の会に入り、学生部リーダーとなったばかり。ちょっとおっちょこちょいだが勢いがあり、いつも元気がいい。

◇「第6回タンザニア甲子園大会」の映像


筆者

友成晋也

友成晋也(ともなり・しんや) 一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事

中学、高校、大学と野球一筋。慶應義塾大学卒業後、リクルートコスモス社勤務を経てJICA(独立行政法人国際協力機構)に転職。1996年からのJICAガーナ事務所在勤時代に、仕事の傍らガーナ野球代表チーム監督に就任し、オリンピックを目指す。帰国後、2003年にNPO法人アフリカ野球友の会を立ち上げ、以来17年にわたり野球を通じた国際交流、協力をアフリカ8カ国で展開。2014年には、タンザニアで二度目の代表監督に就任。2018年からJICA南スーダン事務所に勤務の傍ら、青少年野球チームを立ち上げ、指導を行っている。著書に『アフリカと白球』(文芸社)。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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