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「イスラム国がモザンビークを攻撃」の衝撃(結)

ロシアの軍事支援、「資源の呪い」国家への階段

舩田クラーセンさやか 国際関係学博士、明治学院大学国際平和研究所研究員

 三井物産が関与し日本の税金が投入されるアフリカ・モザンビークの天然ガス開発。米国をはじめ世界の資金がなだれ込んで政治は腐敗し、国内の格差は拡大。イスラム国(ISIS)が関与を表明する襲撃事件も相次ぎ、治安維持を口実とした国家による暴力が広がる。そこへロシアがモザンビーク政府への軍事支援に乗り出した。
 大国の思惑が交錯する天然ガス争奪戦がもたらした国内闘争の泥沼化に苦しむ現地の人びと。最前線でこれに抗う市民社会には死者も出ている。日本の関心は資源ばかりに向いてこの国の惨状は「遠い国のできごと」と他人事だ。しかし、本当にそうなのか?
 一連の出来事の真相を、歴史と国際関係の「縦軸と横軸」であぶり出す。連載の最終回。

ロシアからの軍事支援の到着

 モザンビーク国防大臣が海外からの協力を求めた2日後の9月26日、ロシアから空輸され、ナカラ国際空港に到着した兵器の写真がモザンビーク内外を駆け巡った。

 地元紙Carta de Moçambiqueによると、兵器はロシアの民間軍事会社ワグネル(Wagner Group)社のものであり、ナカラ国際空港でロシア製輸送機に移し替えられ、カーボデルガード州に向けて飛び立ったという。同紙は、モザンビーク国防省に取材したものの、「何も知らない」との回答が返ってきたことを明らかにしている。

 また同紙は、ワグネル社の関係者が、すでに1ヶ月前から、ナンプーラ州のナカラ市、カーボデルガード州のマコミア、ムエダに駐留していると報じている(Carta de Moçambique 2019年9月27日)。なお、ムエダはニュシ大統領とントゥムケ大臣の出身地であり、「マコンデ人の心臓部」と呼ばれるムエダ高原にある。

拡大クリミア半島シンフェロポリ近郊のウクライナ軍の精鋭部隊が駐屯する基地周辺を歩くロシア兵=2014年3月21日

 今月2日のThe Times紙では、ヘリコプター3機、200名のロシア人戦闘員がすでにモザンビーク北部に到着しており、この中にはエリート部隊とパイロットが含まれ、モザンビーク国軍の訓練にあたると詳報されている(こちら参照)。その2日後のAfrican Intelligence誌によると、ロシアから提供された支援には、上空からの諜報と攻撃が可能なMi17ヘリコプター一機、ドローン数機が含まれていたという(African Intelligence 2019年10月4日)。

 実は、昨年4月、モザンビーク国防大臣が、ロシアの国防大臣との間で、ロシア海軍のモザンビーク入港を認める合意を調印していたことが明らかになっている。今年8月には、モザンビークの閣僚会議がこれを追認したばかりであった。

 また、同月22日、ニュシ大統領がロシアに訪問した際、2国間の軍事部門ならびにエネルギー部門での協力強化を確認したことが、Voice of America(VOA)に言及されている(VOA 2019年10月2日)。後に詳しく触れるが、ここでは、「軍事協力」と「エネルギー分野での協力」が並列されている点に注目したい。

 ロシアからの軍事支援の到着に国際的な注目が高まる中、今月4日、国連総会から戻ったばかりのジョゼ・パシェコ外務・国際協力大臣は、この件について「タイムリーな支援」であり、「人びとを保護し、秩序を保つための能力向上のための協力」と主張した。しかし、ロシア人兵士(傭兵含む)の存在や武器の種類や量についての説明はなく、これは駐モザンビーク・ロシア大使館も同様であった(Lusa 2019年10月4日)。

 続けてパシェコ大臣は、レナモとの和平合意が成立した現在においては、この北部の武力攻撃を「喉元に刺さったトゲ」と表現し、この終結のために「すべての協力を歓迎する」と述べ、ロシアの軍事支援が排他的なものではないと強調した。

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筆者

舩田クラーセンさやか

舩田クラーセンさやか(ふなだクラーセンさやか) 国際関係学博士、明治学院大学国際平和研究所研究員

京都生まれ。国際関係学博士(津田塾大学)。1994年にモザンビークにて平和維持活動(UNMOZ)に参加し、パレスチナとボスニア・ヘルツェゴビナなどで政府派遣要員として紛争後の民主選挙の監視に関わった。その後、研究活動を進め、2004年から2015年まで、東京外国語大学にて「戦争と平和学」「アフリカ研究」「国際開発・協力」などの教育に携わる。その後、研究の軸足を「食と農」に移すとともに日本内外で市民社会の活動にも積極的に関わっている。著書に「モザンビーク解放闘争史〜「統一」と「分裂」の起源を求めて」(御茶の水書房)、The Origins of War in Mozambique (African Minds)、共著に「解放と暴力〜アフリカにおける植民地支配と現在」(東京大学出版会)、The Japanese in Latin America(Illinois University Press)、編著に「アフリカ学入門」(明石書店)、訳書に「国境を越える農民運動〜草の根が変えるダイナミズム」(明石書店)。 ブログ:https://afriqclass.exblog.jp/ ツイッター:https://twitter.com/sayakafc

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