森ゆうこ議員の質問漏洩問題から見える日本の劣化
霞が関の片隅で起こった日本の劣化が日本の社会全体を蝕む前に私たちがするべきこと
米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士

10月15日の参院予算委で、国民民主党の森ゆうこ氏の質問に答弁する武田良太防災担当相=2019年10月15日
日本に大きな被害をもたらした台風19号が関東平野に迫りつつあった10月11日金曜日の21時頃、連休明け15日の予算委員会での森ゆうこ参議院議員の質問に関する事前通告が遅いという、「官僚」を名乗る複数のアカウントからのツイッターに投稿が流れ、これに対して森議員が「所定の17時前の16時30分に提出済み」と反論し、それを産経新聞がツイッター投稿をそのままなぞる形で報道して議論を呼びました。
この騒動はその後、元財務官僚である高橋洋一氏が14日にインターネット番組「虎の門ニュース」で、「私も通告書を見た。役所の方から来たものだ」と発言。まだなされていない森議員の質問の詳細を語り、野党から「情報漏洩」との批判が上がると、「事前通告された質問は公務員が守秘義務を負う秘密には当たらない」「むしろ事前公表すべきもの」と主張し、更なる議論を呼びました。なお直近で高橋氏は、「実は見ていない。見てきたように語ったものだ」と発言を変えていますが、氏にメールが渡ったことを、後述の通り内閣府の事務局が確認しています(朝日新聞デジタル2019年10月18日)。
私には、この問題は日本の官僚システム、さらには社会制度全般の劣化を映しているものと思えてなりません。そこで、本稿では、
(1)質問通告制度の概要と意義。そもそも質問通告とはどういう制度で、なぜ必要で、それが遅れると何が起こり、その問題点を回避するにはどうしたらよいか
(2)事前通告に仮に「遅れ」があった場合(今回の問題では、参議院事務局は「16時30分に受け取った」としており、遅れはありませんが)、「官僚」が匿名のアカウントで議員をあげつらう事は適切か
(3)事前通告を第三者である民間人に漏洩することに問題ないか
について論じたいと思います。