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パレードのない即位の礼の日に考えたい元号のこと

「平成」「戦後」「昭和」の遺産を受けた「令和」という時代のイメージは

鈴木洋仁 東洋大学研究助手

「令和初」の存在感は

 「令和初」や「令和最初」は、改元直後の5月こそ142件登場しますが、6月には52件(6月)に減り、「令和初の甲子園」に向けた地方大会予選が行われた7月には75件に増えるものの、8月には62件、9月以降は19件にとどまります。

 もちろん、新聞記事データベース上で「令和初」や「令和最初」が多く使われていないからといって、必ずしも「令和」の印象が薄いとか、存在感があまりないと断言する根拠にはなりえないでしょう。なにしろ、令和はまだ始まったばかりですから。

 ただ、パレードを中止するほどの大きな被害をもたらした台風19号について、「令和最初の」や「令和初の」といった枕詞はつけられませんでした。そんな枕詞をつけることがはばかれるほどの大災害という側面もあるでしょうが、そこで感じるのは、私(たち)が生きている時代のイメージと「令和」という元号の間のなんとも言えない距離感です。

「アラサーの平成ちゃん」

拡大皇居に入る天皇、皇后両陛下=2019年10月18日、皇居・半蔵門
 いまから4年前、まだ「生前退位」が取りざたされる前年、『アラサーの平成ちゃん、日本史を学ぶ』(もぐら、藤井青銅著、竹書房)というマンガが出版されています。「大化」に始まる元号を擬人化(キャラ化)して、これまでの歴史を伝える、わかりやすい作品です。

 南北朝時代を代表する「建武」が傷ついた武士として描かれたり、「大正」がデモクラシーにちなんで(?)、可憐な少女として登場したりして、工夫をこらして説明しています。

 注目したいのは、このマンガが、今回の改元よりも、さらには改元が決まるよりも前に刊行されている点です。

 今回の改元に際しては、天皇陛下のいわゆる「崩御」を伴わないため、お祝いムード一色で喜ぶことができる、と何度も強調されました。私自身もテレビに出演した際、そのように発言しました。

 けれども、「平成」は、「生前退位」が取りざたされるよりも前に、こうしたマンガのキャラクターになった。しかも、「アラサー」(30歳前後)の女性として、「私って一体 なんなんだろう」とか「もう私自分の存在意義がわからない うわああんっ」と泣き崩れています。

 言うまでもなく、今回の改元の特徴に基づき、「平成」の擬人化がなされたわけではありません。「#令和ちゃん」というキャラクターが、新元号発表後にウェブ上にあらわれるよりも前に、「アラサーの平成ちゃん」は、自らのアイデンティティーのよりどころについて悩んでいました。

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筆者

鈴木洋仁

鈴木洋仁(すずき・ひろひと) 東洋大学研究助手

1980年東京都生まれ。2004年京都大学総合人間学部卒業後、関西テレビ放送入社。その後、ドワンゴ、国際交流基金、東京大学特任助教を経て現職。東京大学大学院学際情報学府博士課程修了。博士(社会情報学)。専門は社会学。著書に『「元号」と戦後日本』(青土社)、『「平成」論』(青弓社)がある。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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