いま、深刻な「いのち」の危機が、被災地だけではなくこの国のあちこちで起こっている
11月23日から26日までの4日間、カトリック教会の教皇フランシスコが来日する。38年ぶり2度目となるカトリック教会の教皇来日にはどんな思いが込められているのか。来日の意義はどこにあるのか。カトリック東京大司教区の菊地功・大司教が語った。
カトリック教会の教皇による来日は、1981年の第264代教皇ヨハネ・パウロ二世以来、38年ぶり2度目となります。
教皇が今回の来日を決めた背景には、さまざまな思いがあったと思います。
一つは、教皇個人としての、日本という国への思いです。
教皇はもともとイエズス会に所属している方ですが、そのイエズス会にとって日本は、創立者の一人であるフランシスコ・ザビエルが、修道会の創立まもない時期に宣教に訪れた特別な場所です。
教皇も若いころから宣教のために訪れたいと考えていました。
しかし、健康状態など、さまざまな事情で叶わなかった。それだけに今回、改めて日本を訪れることには、強い思い入れがあったと思います。
そしてもう一つ、教会のリーダーである教皇という立場から、世界に「核兵器廃絶」に向けたメッセージを発信する機会にしたいという思いもあるように思います。今回の来日では、24日に長崎、広島の慰霊施設を訪れる予定です。
先年、教皇は、被爆直後の長崎で写真家のジョー・オダネルによって撮影された写真「焼き場に立つ少年」に平和を求めるメッセージをそえて、世界に配布しました。
こうしたことにも象徴されるように、核兵器廃絶は、教皇がこれまでもっとも力を入れて取り組んで来たテーマの一つです。
教皇自身も折に触れて核兵器廃絶への思いを語ってきましたし、2017年に国連で核兵器禁止条約が採択されたときには、バチカン市国はそれに最初に署名・批准した国の一つとなりました。また、同じ17年には、「核兵器のない世界と統合的軍縮の展望」と題する国際会議が、バチカンの主催で開かれています。
核兵器は廃絶すべきというだけでなく、そもそも所有すること自体が倫理的に許されない。それが、教皇の一貫した主張です。
そのメッセージを、被爆地である広島・長崎、とりわけキリスト教と縁の深い土地である長崎で発信したいという思いは、強く抱かれていると思います。