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ローマ教皇フランシスコの日本への思い

いま、深刻な「いのち」の危機が、被災地だけではなくこの国のあちこちで起こっている

菊地功 カトリック東京大司教区大司教

「いのち」を根底に置いた価値観の回復を

 今年夏に参議院選挙があり、山本太郎氏が率いる「れいわ新選組」が躍進しました。障がい者の方を二名、政界に送り込んだのには驚かされました。

 選挙期間中は、山本氏の選挙演説を聞きに、多くの人が集まりました。これまでにない額の寄付金が寄せられ、中には、ポケットに数百円しかない人が、その数百円を差し出した、というようなことがあちこちであったとも耳にします。

 それは山本氏が、政治に「いのち」の問題を持ち込んできたからであるという見方もできます。そしてそれを、決まり切った文句ではなく、聞く人の心に落ちる、まさに「生きた言葉」で語りかけたからではなかったかと思います。

拡大当選を決め、記者会見で笑顔を見せるれいわ新選組の木村英子氏(左)と山本太郎代表=2019年7月22日、東京都千代田区

 経済的な問題として「消費税廃止」を叫ぶだけでなく、「いのち」をどう守っていくのか、あるいは「いのち」の危機に瀕している人の声をどのようにすくい上げるのか。

 貧困の問題も、難民の問題も環境問題も、あるいは死刑の問題なども、すべて「いのち」を根底に置いて考えていく。そうした価値観を回復していくことが、今の日本では何よりも急務だと思います。

 今回の来日で教皇が訪れる広島、長崎、そして東北の被災地の人々との面会でも「いのち」の問題は問い直されるのではないかと考えています。被災者の方々の現状には、今の日本の「いのちの危機」のすべてが、象徴的に表れていると思うからです。

 若い世代がみな地元を離れてしまって、高齢者しか残っていない。原発事故によって地域の共同体も破壊されてしまって、孤立している人も多い。そこから精神的に追いつめられたり、経済的に逼迫したりして、自死に追い込まれるケースさえある……。

 そうした、深刻な「いのち」の危機が、被災地だけではなくこの国のあちこちで起こっているのです。

 その現状を、多くの人がしっかりと認識し、いのちを守っていこう、すべてを「いのち」をベースにして考えていこうという価値観を取り戻していく。

 教皇の来日と、その際に発せられるメッセージが、そのためのきっかけの一つとなることを願っています。

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