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関電不祥事を招いた独占企業の体質とボス政治の罪

関電幹部になぜ金品は渡ったのか。地方の利権差配の実情とそこからの脱却方法を考える

三浦瑠麗 国際政治学者・山猫総合研究所代表

大規模開発に伴う“風土病”

 もうひとつは、こうした問題は原発に限らず、土地が絡む大規模開発に伴う“風土病”のようなもので、第三者委員会が調査したところで、問題が根源的に改善するものではないということが挙げられます。

 日本だけというわけではないですが、土地が希少資源である日本では、とりわけ土地や法規制が絡む開発において、さまざまなステークホルダーが関わってきます。地域住民、地権者、隣接区域の農業や漁業従事者、規制当事者である官庁や自治体、その職員、地元の工事業者、地域社会の顔役……。場所によっては暴力団のような反社会的勢力が幅を利かしているところもあります。

 つまり、住民に説明会をしても、すべてが市民ではなく、その他のステークホルダーがうごめく場合がありうるわけです。そこで暮らす住民や農業者などは、安全性への懸念や景観、経済的な見返りといった多様な目的で参加するわけですが、外部の勢力の場合、目的はほぼすべて、影響力の維持と利益の獲得にあります。

 開発の投資元は、自らのコンプライアンス上、直接に地元の業者とやり取りをすることは避ける傾向にあります。すると、ステークホルダー同士、あるいは開発をする目的会社を取り持とうとするアクターが暗躍し始めます。そのような存在が森山元助役を支えていた可能性もあるし、あるいは表面上は助役にすぎなかった森山氏自身がそのような存在であったのかもしれません。

 森山氏は自らを、「町を富ませるファシリテーター」であると自認していた可能性があります。実際、関電からの多額の寄付が町に落ちている。とはいえ、外形的に見れば、自らのお友だち企業に利益が還元され、個人の誕生日パーティーに重要人物が詰めかけ、また関係者が日参するという、ボスによる「利益誘導政治」以外の何物にも見えません。

拡大高浜原発のゲート前で横断幕を掲げて抗議する人たち=2019年10月8日、福井県高浜町の関西電力高浜原発

「同和問題」を特別視するのは間違い

 ここで念のため、ネットに出回っている言論で、関電が森山元助役からの贈り物を断り切れなかったのは、「同和問題」が関わっているから、それを報道しないのはマスメディアの真実を隠蔽しており、関電にアンフェアであるという主張について、検証しておきましょう。

 こうした主張の多くは、共産党の機関紙「赤旗」の古い記事を引き合いに出して、メディアはその同和との関係性を取り上げるべきだとします。ただし、森山氏が権力を振るっていたということ全般に関してストーリーに加えるだけならばともかく、「関電問題」について、ことさら部落解放同盟の文脈を特別視するのは間違っています。

 地方の開発の実情を知る者からすれば、この程度の恫喝(どうかつ)、発注にかかわるえこひいきや金銭の授受が存在することは、特別でも何でもないからです。多くの人が 「部落解放同盟」という存在を神秘化して、これが物事の本質であるかのごとくツイートしようとするのは、そもそも地方の現場を知らないからです。

 同和問題をことさらに言い立てることで、むしろ本件を特別視しすぎる懸念すら存在します。問題の本質は「普遍的なボス政治」のほうであって、「偏在的な同和問題」ではないのです。

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筆者

三浦瑠麗

三浦瑠麗(みうら・るり) 国際政治学者・山猫総合研究所代表

1980年神奈川県茅ケ崎市生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。専門は国際政治、比較政治。東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経て現職。著書に『シビリアンの戦争―デモクラシーが攻撃的になるとき』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)、『あなたに伝えたい政治の話』(文春新書)、『21世紀の戦争と平和 徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)など。政治外交評論のブログ「山猫日記」を主宰。公式メールマガジン、三浦瑠麗の「自分で考えるための政治の話」をプレジデント社から発行中。共同通信「報道と読者」委員会第8期、9期委員、読売新聞読書委員。近著に『日本の分断―私たちの民主主義の未来について』(文春新書)。

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