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天皇が参拝できる靖国に~即位の礼で考えたこと

靖国問題は外交問題ではなく国内問題。安倍首相は国内保守派の説得を

登 誠一郎 元内閣外政審議室長

「靖国問題」は外交問題ではなく、国内問題ととらえるべし

 今年の靖国神社の秋季例大祭には2年半ぶりに安倍内閣の閣僚2名が参拝したが、これに対して中国および韓国から非難が寄せられた。

 安倍首相は6年前に靖国神社を参拝したが、これに対して同盟国の米国から「失望した」という公式反応が寄せられるなど内外に大きな波紋を生じた。

 国のために尊い命を犠牲にした英霊に対して尊崇の念を表することは、本来なら一国の首相として当然のことであり、内外から批判されるいわれはない。

 しかし1978年に靖国神社がA級戦犯を合祀したことにより状況は一変した。A級戦犯合祀は近隣諸国との国際問題である以前に、我々日本人自身にとっての大きな問題を投げかけた。

 昭和天皇はこれを契機に靖国参拝を中止され、上皇は天皇在位中一度も参拝されなかった。

 これは靖国神社に祀られている英霊の遺族にとっては痛恨の極みである。

 遺族の立場からすると、太平洋戦争で犠牲になった多くの将兵は、天皇のために戦ったと意識し、「天皇陛下万歳」と叫んで戦死したのである。遺族が待ち望んでいるのは、首相というよりも天皇陛下による参拝(即ち親拝)である。

 国内の保守派の論客の中には、昭和天皇が78年以降は靖国神社訪問を中止したのはA級 戦犯合祀とは関係なく、当時国会で問題になった三木首相の参拝を巡る政教分離の議論が皇室に波及することを懸念した結果である、と主張している。

拡大三木武夫首相は1975年8月15日の終戦記念日に、戦後初めて現職総理大臣として靖国神社に参拝した

 しかし、天皇はその後も毎年伊勢神宮ほかのいくつかの神社を参拝されている事実をはじめ、皇室と神道との特殊な関係を考えると、この主張は受け入れがたく、A級戦犯合祀以外には、昭和天皇の参拝中止の理由を見出し得ない。

 2006年に明らかになった富田元宮内庁長官のメモに加え、最近発見された昭和天皇の側近者の日記などによっても、靖国参拝に関する昭和天皇のお考えは明らかと判断される。

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筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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