激烈さを増す“雨台風”への長期戦略
地球温暖化対策にくわえてわれわれに突きつけられている課題とは
田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授
いまや不可避な地球温暖化への対応

壊滅的な被害を受けた決壊した千曲川の堤防近くの集落=2019年10月20日、長野市
従来の気候が明らかに様変わりしているのは、なにも日本だけの現象ではない。世界のどこでも、かたちは地域ごとにさまざまだが、異常な気象に悩まされている。それが、地球温暖化に起因するものだと言われれば、そうに違いないと思われるほど、学術調査のデータもそろってきている。海面温度の上昇、あるいは水位の上昇を指摘されれば、近年の“雨台風”への変容がよく理解できる。
世界が気候変動をもたらす温室効果ガスの削減に本格的に取り組まない限り、こうした異常気象はますます深刻化するだろう。そして、将来的には“雨台風”の威力はいっそう破壊的になるであろう。それは確かなことのように思われる。
温暖化対策は不可避であり、具体的に一日も早く対応しなければならない――。これが、19号台風からわれわれが念をおされた課題である。
水田の減少で国土の貯水能力も減少
くわえて、われわれは別の方面からの課題もまた、突きつけられている。それは、しばらくは巨大な台風の出現を回避できないのであれば、被害を最小にするような根本的な取り組みを始めなければならないということだ。
言うまでもなく、今回の台風や集中豪雨で被害を受けた人々への経済・生活面での救済は、当然ながら急がなければならない。その上で、将来を見据えた長期戦略が必要なのである。
そう書くと、すぐに「国土強靱化」という言葉が浮かぶ人は少なくないだろう。いわゆるインフラの強靱化が必要なことは、私も否定はしない。ただ、それだけでことはすむのか。もっと根本的なところに課題があるのではないかという気がしてならない。
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