伊東順子(いとう・じゅんこ) フリーライター・翻訳業
愛知県豊橋市生まれ。1990年に渡韓。著書に『韓国 現地からの報告――セウォル号事件から文在寅政権まで』(ちくま新書)、『もう日本を気にしなくなった韓国人』(洋泉社新書y)、『ピビンバの国の女性たち』(講談社文庫)等。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
JR下関駅から歩道橋を歩いて行くと、そのままフェリー乗り場に着く。徒歩わずか5分。港はまさに街の中心にあり、そこから毎日韓国行きのフェリーが出ている。あらためて、日本と韓国の近さを実感する。ところで、その下関港国際ターミナルのビルに入って驚いた。
今日は休みなのだろうか?
そんなはずはない、朝、電話で確認したばかりだ。それにしてはあまりにひと気がない。場所を間違えたのかと思ったが、2階に上がると切符売り場があり、そこでパスポートを見せたら、あっという間に乗船券が買えた。18時半から乗船にはまだ1時間ほどあったので、周辺を見て回ったのだが、とにかく人がいない。ソファで寝ている人が1人、外で煙草を吸っている人が2人。
やがて乗船時間が来たので、船に乗り込んだのだが、そこでもまた驚いた。
船室に人がいない。
私は人々の話を聞くのが好きなので、フェリーは大部屋、ゲストハウスはドミトリーのが好きだ。もちろん安いのも魅力だし。なのでこの時も、2等船室の大部屋を希望したのだが、なんと一人ぼっち。期せずして、個室になってしまったのだ。カフェや甲板に出てみるが日本人の中年夫婦がいるだけ。いろいろ回ってみたが、ウロウロしているのは10人ぐらい?
そうだ、お風呂に行けばポッタリの人たちがいるかもしれない。彼女たちは乗船したらすぐ、船が動く前に一番風呂に入る。予想通り、お風呂には人がいた。5名ぐらい?
全体的にガラガラの船、定員約500名の船の乗船率は1割をはるかに切っているだろう。8月に入ってから韓国人観光客が激減しているのは知ってはいたが、現実はさらに衝撃的だった。それにこの港は特別なのだ
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