メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

ウグイス嬢二重報酬をめぐる選挙の「商慣行」

細かい割には解釈が適当な公選法の落とし穴

井戸まさえ ジャーナリスト、元衆議院議員

河井夫妻はなぜ「大変驚いている」のか

 辞任した河井克行前法務大臣の妻、河井あんり参議院議員のウグイス嬢に対する二重報酬の問題。報道された内容が正しければ、公職選挙法で定められた報酬日額1万5千円以内を超え支給できないとされている超過勤務手当を払っていたことになる。となれば、運動員買収にあたり、公職選挙法違反となる。

 「大変驚いている」。これは報道を受けての河井あんり参議院議員のコメントだ。河井夫妻にしてみれば本当に驚いたのだろうと思う。

拡大辞任した河井克行・前法相(右)と妻の河井案里参議院議員=2014年12月14日、広島市

 なぜならば、彼らはたぶんこの今回の参議院選挙だけでなく、過去の衆議院選挙、県会議員選挙も同様の対応をしてなんのお咎めもなかったという経験を持っているのだろうから。そして、これは自分たちだけではなく、他の陣営でも当たり前のようにやっていることではないか、とも。

 確かに、実はウグイス嬢への二重報酬の支払いの違法行為は選挙における「商慣行」として一部で定着しており、政治の業界ではある種「暗黙の了解」ともなっている。

 筆者自身は選挙活動を行う時には基本的にウグイス嬢を雇わないので、こうした二重報酬問題が起こりようなく、公職選挙法に抵触する恐れがある業界全体の問題として以前から指摘をしてきた。しかしこの問題で声を上げる政治家が他の事案に比べて少ないのは、少なからずの政治家が「脛に傷を持つ身」で、自分以外に事実を知っている第三者がいるということに対する怯えがあるということなのだろうか。

 また、詳しくは後述するが、二重報酬に関しては候補者だけでなく、報酬を受ける側のウグイス嬢や派遣会社も同じ認識を持っているからこそ成立する「商慣行」である。

 当事者たちに法を犯している認識が欠如しているのは、同様ケースで稀に逮捕される人が出ても基本的には「落選者」と相場が決まっているからだ。権力に近い側にいるものが捕まるわけはないという思い込みも含めて、もしも捕まるようなことがあったら「運が悪かった」で済ませてしまう。「駐車禁止」と同じような感覚でとらえられていた向きがある。まさか、この程度で自分たちが窮地に立たされることなどあるはずがない。だからこそ「驚いている」のである。

 なぜ今回? なぜ自分たちだけ? ――河井夫妻のそんな問いかけが聞こえてきそうである。

 秘書との信頼関係が築けていなかったり、パワハラ等への反逆という側面もあるだろう。党内抗争だと指摘する人もいる。加えて重要なのはこの事例は「公職選挙法」が大きな政治闘争の中である種局地的・属人的に使われる余地を多分に孕んだ法律だという重要な論点も示してもいるのである。そこにこそ、なぜ?への答えがある。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

井戸まさえ

井戸まさえ(いど・まさえ) ジャーナリスト、元衆議院議員

1965年宮城県生まれ。ジャーナリスト。東京女子大学大学院博士後期課程在籍。 東洋経済新報社勤務を経て2005年より兵庫県議会議員。2009年、民主党から衆議院議員に初当選(当選1回)。著書に『無戸籍の日本人』『日本の無戸籍者』『 ドキュメント 候補者たちの闘争』、佐藤優との共著『不安な未来を生き抜く最強の子育て』など。

井戸まさえの記事

もっと見る