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小沢一郎「もう一回舞台を回さないといけない」

(20)細川護熙はあまりに淡泊だった。渡辺美智雄と羽田孜は決断できなかった

佐藤章 ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長

使命感に貫かれた「職業としての政治」

 1955年体制を粉々に打ち砕いた細川護煕・非自民連立政権はわずか9か月で歴史の舞台から去っていった。

 この政権をプロデュースし屋台骨となって支え続けた小沢一郎はいま、「細川政権が2年続いていたら自民党はもう崩壊してましたね」と回顧し、歴史の大きい歯車が回りきらないうちに主役が舞台から降りてしまったことを悔やむ。

 しかし、「小沢一郎戦記」主人公の戦いの記録は現在進行形でまだまだ続いている。人々の生活が続く限り人間の歴史は展開し、そこに政治の世界は存在し続ける。つまり日本政治の改革を己の使命とする小沢一郎の戦いの記録には終幕はないのだ。

 1993年から94年にかけて細川政権の経験があり、さらにその後2009年から12年にかけて民主党政権の挑戦と挫折があった。それらの歳月の果てに現在、安倍自民党政権が存在している。

 「そして、もう一回舞台を回さないといけない」

 こう語る小沢にインタビューを重ねるうちに、私は最も基本的なことに今更ながら気がついた。私が質問を重ね、その言葉を逐一レコーダーに記録している相手は歴史家でも政治学者でも文学者でもない。果てしのない日本政治の改革を志し、どんなことがあっても決して自己の使命を忘れずに、日々努力を積み重ねている一人の重要な「職業政治家」なのだと。

 「政治とは、情熱と判断力の二つを駆使しながら、堅い板に力をこめてじわっじわっと穴をくり貫いていく作業である」(マックス・ヴェーバー『職業としての政治』岩波文庫)

 第一次世界大戦に敗れ、騒然とした空気に包まれていた1919年1月、M・ヴェーバーは権力としての政治の本質について講演した。原題はPolitik als Beruf。Berufの意味はここでは「職業」と翻訳されているが、何よりもヴェーバーが代表作『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』の中で駆使したキーワードBeruf、邦訳では「召命」「天職」、そして「使命」である。

 使命感に貫かれた「職業としての政治」。わかりやすい言葉で叙述された前記のヴェーバーの政治の定義。これ以上に小沢一郎の本質を言い表した言葉があるだろうか。

拡大地元で街頭演説する小沢一郎氏=2019年7月19日、岩手県奥州市水沢

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト、慶應義塾大学非常勤講師、五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

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