世界で強まる風当たり 日本は「意識低い系」?
2019年11月09日
気候変動を気にかけ、人為による温室効果ガスの排出が地球の温暖化といった異常気象に関係していると危惧する人が増えている。そのために、地球に住む市民の責任として、大量の温室効果ガスの排出につながっている肉の摂取を抑制する動きも世界中で着実に広がっている。
2019年8月、CNNは、イギリスのロンドン大学ゴールドスミスカレッジにおいて、キャンパス内での牛肉製品の販売がすべて停止されると伝えた。2025年までに温室効果ガスの一つである、二酸化炭素(CO₂)の排出量を実質上ゼロにする「カーボンニュートラル」を実現するためで、9月からキャンパス内すべての食堂やカフェなどが対象となる。
さらに、ペットボトル入りの水や使い捨てプラスチック製カップについても、利用抑制をねらって10ペンス(約12年)の支払いを求められる。徴収金は学生向けの基金に振り向けられるという。
このニュースを知っている筆者からすると、文化祭のシーズンを迎えた日本の大学で、どれだけの学生が「意識高い系」のふるまいとして、こうした地球環境への配慮を実践しているかが気になる。おそらくロンドン大学のような問題意識そのものを全学あげて共有し、しっかりした対策を実践している日本の大学は皆無ではないか。
ハーバード大学のニュースサイトをみると、2019年9月24日付けで、「大学、2030年までの25%の改善を誓うCool Food Pledgeに署名」という記事がアップロードされている。ぜひとも、この記事を読んでほしい。食品にかかわる温暖化ガス排出を2030年までの25%削減する集団目標にコミットする誓約である、「クール・フード誓約」にハーバード大学として署名し、食堂などでのメニュー選択などに注意を払うことで食品の気候への影響を減らす努力をするというのだ。
すでに大学として、2026年までの化石燃料を実質的にゼロ(ニュートラル)にし、2050年までに化石燃料ゼロを実現するイニシアチブがあるから、これを補完するものとしてこの新しい誓約署名がなされたわけである。
この「クール・フード誓約」を提唱している機関は世界資源研究所(World Resources Institute, WRI)という、天然資源・環境問題をめぐる政策提言をするシンクタンクである。ハーバード大学と同じ日に署名した組織には、世界銀行、IKEA、BASF、ピッツバーグ大学、ベルギーのヘント市が含まれている。
WRIによると、これらの署名機関が2030年までに目標の25%削減を達成すれば、それらの機関は食品に関連する温室効果ガスの毎年の排出量にあたる78万トン強を回避することになる。これは、16万台強の自動車を一般道からなくすことに相当する。
なお、東京大学は2008年に「東大サステイナブルキャンパスプロジェクト」を全学的なプロジェクトとして立ち上げた。しかし、その後の取り組みは必ずしも十分ではない。少なくとも「意識高い系」のハーバード大学の後塵を拝している。もっとも他の日本の大学はハーバード大学や東大に比べると、「周回遅れ」の惨憺たる状況にある。
牛、豚、鶏などの家畜は食物消化時に、胃腸などの消化管内の発酵で生じる、温室効果ガスのメタン(CH4)を空気中に排出する。ほかにも、排せつする糞尿などに含まれる有機物が糞尿管理(糞の堆積発酵や尿の浄化など)の途上でメタン発酵によってメタンに変換されて空気中に排出される。
国連の食糧農業機関(FAO)が2006年に公表したところでは、地球上の全家畜からの温室効果ガスは世界中の温室効果ガス排出量の14.5%にあたる。だからこそ、気候変動防止のために人為による温室効果ガスの排出削減が必要とみなす人々にとっては、家畜によって排出される温室効果ガスを無視できないのだ。
FAOのサイト情報によると、牛肉と牛乳のために排出される温室効果ガスはそれぞれ家畜全体の排出量の41%と20%にのぼる。豚肉は9%、鶏肉と卵は8%とされている。このため、とくに牛肉や牛乳への風当たりが強まっている。
The Economist(2019年10月12日付)に興味深い記事が掲載されている。肉の代替品としての植物性の肉の将来性に注目しているのだ。Euromonitorという市場調査会社によると、アメリカ人は肉の代替品に年間14億ドルを費やしているが、それは本物の肉に消費する金額の約4%にすぎない。
一方、ヨーロッパの人々は年15億ドル、本物の肉に費やす額の9~12%を「肉なしの肉」に
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