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日本から見えにくい中国経済のもう一つの本質・上

社会主義国の中国を資本主義の物差しで考え続けていいのか

酒井吉廣 中部大学経営情報学部教授

中国型の社会主義経済とは

 中国はあくまで共産主義国であり、世界中の中国専門家が言及するように、「国有企業」が主要産業を占めている。国有企業は非効率で、リストラ(企業によっては淘汰)が必要だと、これまでも繰り返し指摘されてきた。だが、その一方で、国の指導によって傾斜生産方式が可能なので、それが浸透すれば世界にとって脅威だという見方もある。

 そうしたなかで、このところ存在感を強めているアリババやテンセント、ファーウェイなどの新興民間企業は、IT、先端技術分野に集中しており、彼らのグローバル競争力は、国内市場の規模が大きいこともあって、非常に高いと評価されている。ただ、こうした企業群は中国沿岸地域に存在するため、企業がある都市とその周辺、沿岸部と内陸部との間で経済格差が存在する。中国当局もこうした事実を認識し、それを克服するための政策を講じつつ、彼らなりの将来プランを描いている。新幹線も高速道路も、高層マンションの建設もその一貫だ。

拡大全人代で政府活動報告をする李克強首相=2019年3月5日、中国・北京
 こうした概要が示されたものとして、最近では李克強首相が3月5日の全人代で行った政府活動報告と、6月28日の「ボアオフォーラム」での開会演説が挙げられる。

 李首相の説明は「中国型の社会主義」に基づく。これは、旧ソ連が共産主義の運営に失敗したことを受けて修正した「共産主義の変形としての社会主義」であり、資本主義から派生してフランス等に根付いた「資本主義をベースとする社会主義」とも、2016年の米大統領選挙の民主党予備選でサンダース上院議員が主張した「米国の民主社会主義」とも異なる。

 言い換えれば、こうした中国型の社会主義のもと、指導者の強いリーダーシップで、国民全体を公平に幸せにするための社会経済システムが、中国型の社会主義経済なのである。

資本主義に移行すると民主主義になるはずが……

 中国を「国家資本主義」と考える人たちの議論に従うと、非効率な国有企業はある程度は効率化できても、やがては民間企業に負けるので、いずれ普通の資本主義に至るという結論になる。また、傾斜生産方式で国有企業が強くなっても、中国経済のプレゼンスが高くなるだけで、やはり資本主義に向かうと考える。その結果、社会主義は民主主義へと移行すると考える人が多い。。

 資本主義のもとで生活するわれわれがそう考えがちな理由は、経済が資本主義に完全移行する段階、または共産主義が機能しなくなった段階では、国民から自由を求める声が強まり、旧東欧のように政治思想も民主主義に移行するという前提を、無意識のうちにおいているからだ。

 しかし、それが中国については当てはまらなかったことは、ライス元米国務長官が2017年に発行した著書『Democracy』で回顧した通りだ。また、10月25日にペンス米副大統領がおこなった演説もそれを示している。

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筆者

酒井吉廣

酒井吉廣(さかい・よしひろ) 中部大学経営情報学部教授

1985年日本銀行入行。金融市場調節、大手行の海外拠点考査を担当の後、信用機構室調査役。2000年より米国野村証券シニア・エグゼクティブ・アドバイザー、日本政策投資銀行シニアエコノミスト。この間、2000年より米国AEI研究員、2002年よりCSIS非常勤研究員、2012年より青山学院大学院経済研究科講師、中国清華大学高級研究員。日米中の企業の顧問等も務める。ニューヨーク大学MBA、ボストン大学犯罪学修士。

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