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レバノンの「市民デモ」から発信されるアラブ変革

川上泰徳 中東ジャーナリスト

アプリ課税が「最後の一藁」

 デモの発端は、政府が議会に提出する2020年度予算の概要が発表されたことだ。レバノンのメディアによると、日本の消費税にあたる付加価値税(VAT)が現在の11%から数年後には15%まで引き上げる方針が示され、さらにガソリンやたばこに対する増税、さらに「ワッツアップ」と呼ばれるスマートフォンの無料通信・会話アプリの利用に毎月課税する新しい「アプリ税」が導入されることも明らかになった。

 海外メディアはアプリ課税が若者の反乱を起こしたと報じているが、私がベイルート中心部で話を聞いた若者は「それは最後の一藁(わら)に過ぎない」と答えた。

 「最後の一藁」というのは「最後の一藁がラクダの背を折る」というアラブのことわざのことだ。商人がラクダに重い荷物を背負わせて、最後に乗せた軽い荷物でラクダが耐え切れなくなって崩れたという例えで、困難が降り積もって最後に些細なことで破局が訪れるという意味である。レバノンの市民が堰を切ったようにデモに繰り出したのは、アプリ課税に先立つ多くの出来事があったということだ。

レバノンのデモ3日目の10月19日、ベイルート中心部の政府庁舎前の通りで拳を突き上げ「サウラ(革命)」を連呼する市民=川上撮影拡大デモ3日目の10月19日、ベイルート中心部の政府庁舎前の通りで拳を突き上げ「サウラ(革命)」を連呼する市民=撮影・筆者

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

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