星浩(ほし・ひろし) 政治ジャーナリスト
1955年福島県生まれ。79年、東京大学卒、朝日新聞入社。85年から政治部。首相官邸、外務省、自民党などを担当。ワシントン特派員、政治部デスク、オピニオン編集長などを経て特別編集委員。 2004-06年、東京大学大学院特任教授。16年に朝日新聞を退社、TBS系「NEWS23」キャスターを務める。主な著書に『自民党と戦後』『テレビ政治』『官房長官 側近の政治学』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
消費税見直し、「若者減税」、山本太郎氏との連携……。5年以内の政権交代を目ざして
――このような安倍政権に野党としてどう対峙しますか。臨時国会に先立ち、玉木さんが代表の国民民主党、枝野幸男代表の立憲民主党、野田佳彦代表の社会保障を立て直す国民会議が共同会派を組みましたが。
玉木 萩生田文科相の「身の丈」発言は、大臣の資質にもかかわる問題で、野党として厳しく追及します。衆議院で約120人、参議院で約60人という野党の大きな「かたまり」はそのためにあります。緊張感のある政治を取り戻し、民主主義を再起動させるため、野党が一致結束して政権・与党に代わりうるもう一つの選択肢を示さなくてはいけません。
――依然、高い支持率を維持する安倍政権を追い込めますか。
玉木 衆議院の解散・総選挙を迫るぐらいの覚悟で攻めないといけない。そのための共同会派であり、その延長線上に、選挙における一枚岩の体制を早急に構築しなくてはいけません。
――解散はあり得ますか。
玉木 台風被害があったので補正予算を通し、1月の通常国会冒頭解散ということもなきにしもあらずでしょう。解散の機運が高まるのは悪いことではない。野党の連携を一気に進めていきたいと思っています。
われわれが野に下って7年がたち、そろそろ模索と反省の野党から次世代の与党に転換する準備期間に入らないといけない。平成の30年を振り返ると、平成5(1993)年と平成21(2009)年に非自民の政権ができた。その間15年。2009年から15年は2024年なので、5年以内の政権交代が射程に入ってきたと思っています。
東京五輪・パラリンピックが終わった後、2020年代の日本は内政的にも経済的にも外交的にも大変な時代に突入します。「ポスト安倍」を自民党内の問題にせず、野党が政権をとりにいかないとダメです。2020年代、30年代に向けてわれわれが何をするか、具体的に仕掛けていかないといけません。
――先日、『永田町政治の興亡』(朝日選書)という本を出しました。平成の30年、日本政治は実にいろんなことがありました。消費税の導入、政治改革、国際貢献、安全保障などの問題に政治家や官僚、メディアがどう取り組んできたかを、現場を取材した記者として書いたものです。玉木さんは官僚、政治家とし平成を過ごされたわけですが、どんな時代だったと認識していますか。
玉木 平成というか、1996、97年ごろに日本経済・社会が変質したと、私は見ています。たとえば実質賃金は97年をピークに低下、生産年齢人口も減りはじめました。とりわけ実質賃金の下落は深刻です。世帯所得の中央値は平成の30年間で120万円以上減っている。平成とは、日本人が貧乏になった30年だと思います。
会社は儲かっているのに、勤労者へのその果実が分配されていない。グローバル化が進むなか、一部の企業は豊かになったが格差が広がり、普通の人の暮らしは非常に厳しくなり、将来への見通しが立ちにくくなったのが、平成の本質です。令和でやるべきは、こうした経済の悪循環を根本的に変えることです。