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中国の「中国化」と米国の「米国化」の結末は?

「中国を変えていく」政策は破綻し、米国はどんどん内向きになる。日本はどうすべきか

田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

「中国化」はどこまで進むのか

 現在中国共産党にとって最大の課題は経済成長率の急激な低下をどう止められるかという事だ。

 中国政府が発表する経済成長率が正しいかどうかの議論はあるが、政府の発表に従っても2019年の目標値である6~6.5%の最下限を達成しうるかどうかだ。二桁の成長が7%台、6%台へと下降し、更なる成長率低下は必至なのだろう。

 中国共産党の統治の正統性の源泉が成長の担保にあったのだろうし、成長が大幅に低下していく事は統治の危機と見なされても不思議ではない。

 習近平総書記は経済成長を担保するため、引き続き市場開放を拡大する事やビジネス環境を良くすること、国際協力を深化させること等を事あるたびに述べているが、同時に国内的引き締めを格段に強化してきた。反腐敗闘争による共産党内の引き締め、大学やシンクタンクなどの言論統制、ネット規制、監視カメラや個人データの把握を通じる監視社会の徹底だ。キャッシュレス社会も個人情報保護法制がない中国では格好の国民監視手段だ。

 このところ中国の書店には共産党思想関係の本が数多く並ぶ。経済面の改革開放と国内自由の束縛・引締めという「中国化」がどこまで進むのか。

 香港騒動はそういう中国にとってはアキレス腱となりかねない。経済を重視すれば国際社会の制裁を招きかねない人民解放軍による強制措置はとり得ない。しかし、香港市民の要求にずるずる譲歩を重ねることは中国本土に波及しかねない。「一国二制度」と言いながら何が一国二制度なのか規定せず、現状維持を図ること以外策はないのだろう。これは台湾でも蔡英文政権に有利に働くのだろう。

拡大香港返還20年を記念する式典で握手をする中国の習近平国家主席(右)と香港の林鄭月娥行政長官=2017年7月1日、香港

 共産党とって「中国化」と対米関係の相関関係は波乱含みだ。

 米国との関係で中国は二律背反的な行動を迫られている。経済成長を考えれば早く米国との経済制裁に終止符を打ちたい。対米輸出が激減するだけではなく、対米輸出を求めて中国国内の生産設備が東南アジア諸国に移転し、更に成長阻害要因となる。

 一方、米国の強圧的な態度に屈する形をとる訳にもいかない。もし赤裸々な屈服と言う形となれば共産党内での権力闘争が国民の反米ナショナリズムを使う形で噴出することも考えられないではない。

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筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。2006年4月より2018年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、2019年11月10日刊行)、『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。

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