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平和的デモは役立たないとあなた達が教えてくれた

【2】民主派団体 民間人権陣戦副代表・黎恩灝

清義明 ルポライター

「6月9日のデモから、市民が勇武派の抵抗を理解し始めた」

 ところで、この大学にも外国から来ている人は多い。もちろんそれは中国も含めてだ。その人たちはどうしているのか。

 「香港の大学にはたくさんの中国大陸の留学生がいます。彼らは静かです。もちろん、デモに参加することもありません。自分達の政治的な立場を表明することもありません」

 それはそうことになるだろうと思う。

 6月に親中派の香港人が主催した警察支持の集会で参加者に話を聞いたことがある。おそらく数万人は動員していただろう。事前に、やらせの中国人がお金をもらって集まっているだけだと私の通訳から聞いていたので、そういうものなのかと行ってみたところ、実際にそういう風情の人たちの団体はいたものの、そのほとんどは実際に香港人としかみえない身なりをした普通の人たちで、その中にはかなりの数のファミリーや若者たちもいた。

 彼らに話を聞くと、ゴリゴリの中国寄りの発言をする人もいることにはいるが、特に若い人たちは「民主運動には賛成するし、行政府は彼らの意見も聞くべきだ。しかし暴力は絶対にやめるべき」というように柔軟な意見を語ってくれた。考えていた集会とはまるでイメージが違っていた。

 その中にいた大学生の若者は、そういう意見を学校では話すのかと聞くと、「政治的な話をしゃべらないようにしている」と寂しそうに目線を伏せて答えた。「警察官が悪いという話ばかりで、それに反論すれば、ネットでも攻撃されることになります」

 警察官の家族や支持者がネットで炎上し、個人情報や家族への脅迫があるのは今の香港の日常茶飯事なのだ。ましてや中国からの留学生であれば、今の香港情勢にどのようにコミットしたとしてもマイナスしかない。彼らは静かにしているしかないはずだ。

 黎氏も警察に対する批判は変わらない論調だ。それについて彼は「不平等」という言葉を使った。

 「警察の暴力が法で守られているのは不平等です。デモ隊のほうは逮捕され、裁判にかけられ、制裁を受ける。しかし、非合法な暴力を使った警察を、市民のほうから起訴するのは困難です。市民が暴力を行使したらすぐ逮捕されますが、逆に警察に罪があっても、それを追及するのに長い時間がかかるだけでなにもできないのです」

 法の下、両者が公平に裁かれるべきということならば、黎氏の言う通りなのだろう。実際に私もデモの取材のなかで、警察がプロテスター側を情け容赦なく鎮圧する場面に何度も出くわした。彼らはどうやら植民地時代のイギリスの警察の暴徒鎮圧の方法しか知らなそうなのだ。

拡大街頭で休息をとるデモ隊

拡大拘束されるデモ参加者

 しかし、警察の暴力に対抗したということはあるのだろうが、それでもここまでプロテスターが過激化していったというのはなぜなのか。最近の世論調査でも、4割以上の香港市民が過激化する抗議運動を支持しているという調査結果が出ていた。この背景はなんなのか。前回のインタビューでも取り上げた2016年の若者の騒乱は暴力的だと世論から批判を浴びていたのが、なぜここまで支持されるようになったのか。

 「6月9日のデモが重要なターニングポイント

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筆者

清義明

清義明(せい・よしあき) ルポライター

1967年生まれ。株式会社オン・ザ・コーナー代表取締役CEO。著書『サッカーと愛国』(イースト・プレス)でミズノスポーツライター賞優秀賞、サッカー本大賞優秀作品受賞。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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