清義明(せい・よしあき) ルポライター
1967年生まれ。株式会社オン・ザ・コーナー代表取締役CEO。著書『サッカーと愛国』(イースト・プレス)でミズノスポーツライター賞優秀賞、サッカー本大賞優秀作品受賞。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
【3】チャイナ・レイバー・ネット編集委員 區龍宇氏
本土派に対する區氏の見方は厳しい。それは本土派の思想、その香港民族主義と表裏一体の排外主義や暴力的傾向に危険性を見出しているからだ。
本土派の若者は、既存の香港の民主派は民主化のためと言って北京と妥協し、なかにはそこに取り込まれているものすらいる、という主張をしていた。そして何よりも香港人は中国人と違う「民族」だという思想をもっていた。いくら民主化を訴えても、彼らは民主主義そのものを理解していない。民族が違うのだ。だから法治も香港ではないがしろにされている。だからわれわれ香港人は法を乗り越えて対抗せざるをえない。そして非暴力という限界は設けない。このようなことを本土派はこれまで公言していた。
しかし一方で、今回香港の抗議運動で現れた組織化されない匿名の存在からなる勇武派そのものに、組織化された本土派がどこまで実際にコミットしているかについては區氏は懐疑的だ。
「興味深いのは、今回の運動に彼らが果たした具体的な役割というのものが見えないことです。例えば『連登』という匿名SNSに投稿したりコメントしたりするなどして、一般市民に影響を与えようとしているのはわかります。ただし表の活動には出てきません」
しかし実際はその影響力はたいへん強いように見える。特に排外的な言動や暴力的な破壊活動などは彼らの主張に沿っているように見える。
「若者達は二つの傾向に分かれています。ひとつは、開かれた政治傾向をもつグループ。自分たちを本土派だと言っていても、移民達やマイノリティーに対する攻撃はしません。暴力的なこともあまりしたいとも思ってないグループです」
「もうひとつは、暴力的で、言葉も差別的なものを使うグループです。面白いのは、インターネットでのやりとりやデモの前線の様々な場面で、二つのグループの間に意見の相違が発生する