アジア政党国際会議を参考に英語で対話する日韓議員チームをつくろう!
2019年11月17日
GSOMIAが失効する11月23日が迫ってきた。
韓国と日本の間では、1965年の国交正常化以降でも、さまざま摩擦が起こり、そのたびに両国の政府に代わって日韓議員連盟が解決の道筋をつけてきた。2002年のサッカーワールドカップの日韓共同主催を主導したのも同議連だ。
ところが現在、政府間だけでなく、議連間でも事態の収束をはかれるような政治対話が行われていない。
本稿では日韓の政治対話が機能しなくなった原因を探ったうえで、アジアで最大級の政治対話機関であるアジア政党国際会議の事例を参考にして改善策を提案する。
1975年創立の日韓議員連盟は、数多ある議連の中でも名門と呼ばれてきた。日本では長年、元首相らが会長職を務めてきた。韓国側の韓日議員連盟でも同様だ。
それぞれの政界の重鎮が中心になって、日韓大陸ダナ条約、教科書や指紋押捺の問題、アジア通貨危機時の対韓支援など懸案の裏交渉役を務め事態を実質的に打開してきた。
日韓議員連盟による政治対話がなぜ成果を収めたのか。韓国側の政治家の多くが日本語を使えたことが何よりの要因だ。日本語を「共通言語」として双方の国会議員が腹を割って話し合うことができたからだ。
韓国政界とのパイプが太い小沢一郎議員に面談した際、議連がさまざまな問題を解決できたのは韓国側の国会議員の多くが日本語を話せたからではないかと質問したところ「そうだ。今は少なくなったが」と答え、「共通言語」の効果を認めている。
2002年のサッカーワールドカップでは、元首相で議連会長を務めていた竹下登氏が日韓共催の道筋をつけたと言われる。この頃までは韓国側で日本語を話せる政治家がかろうじて存在し、両国政府を説得できるレベルの政治対話が議連間で行われていた。
ところが韓日議連で世代交代が進み、韓国側で日本語を話せる政治家が激減してしまった。それと比例するように議連間の信頼関係は薄れ、問題解決能力が下がっていった。
2005年の島根県の「竹島の日」条例制定をめぐって、韓日議連から条例案議決の留保が要望され、森喜朗日韓議連会長が理解を示したものの、町村外相はそれに応じず、日韓関係が冷え込む事態となった。
韓国側に日本語が堪能な政治家が多数いれば、日本側で韓国側に理解を示すことができる政治家も多数存在し、事態は違う方向に向かったかもしれない。「共通言語」であった日本語が使われなくなった結果、急速に議連の実効力が低下したと言える。
日韓議連が力を落とす一方、国を越える政治家同士の対話機関として急速に発展したのが、2000年にフィリピンのホセ・べネシア下院議長が中心になって設立したアジア国際政党会議(ICAPP)だ。
国際社会には、イデオロギーをベースにした国際民主同盟(IDU)や社会主義インターナショナル(SI)など国際的な政治対話機関がある。それらと異なりICAPPはイデオロギーも与野党も問わない。国会で一定の議席を確保していれば、どんな政党にもオープンだ。
2年に1回開かれる総会には、北朝鮮の朝鮮労働党からも代表団が参加するくらいだ。20年前に発足したばかりなのに、アジアで最大級の政治対話の場へと成長し、今では中南米、アフリカの政党との定期交流、2018年から欧州政党、今秋からは北米政党との定期交流もスタートさせ、世界5大陸全ての政党とのネットワーク構築に向かって着実に進んでいる。
ICAPPの「共通言語」は英語だ。会議は全て英語で行われ、通訳者が入ることはない。
各国の政党代表が均等に割り振られた時間内でスピーチする。朝昼晩のいずれの会食も座席が自由なため、会議テーマ以外にさまざまな案件について参加者は意見交換できる。
イランで開かれた会議に参加した小職はネパールの元首相らと朝食を共にし、双方の政治情勢について率直に語り合った。会議に参加すれば、各国の与野党の政党幹部と一度に多くの知己を得られる貴重な場なのだ。
実は、ICAPPと日韓議連には、「定期交流」「超党派」という共通点がある。相違点は、現在の議連が「共通言語」を持たないということだ。議連が成果を挙げていた前半期では、日本語が実質的な「共通言語」だった。
2015年秋に小沢一郎議員の随行で訪韓した際、金鍾泌元首相(元韓日議連会長)との面談に陪席した。二人は、かつて打った囲碁や現下の両国関係などについて親しげに日本語で語り合っていた。韓国側で国交正常化の最大の功労者と目されていた金氏は、卓越した政治力に加えて、流暢な日本語能力が故に日本の政治家と深い信頼関係を結び、両国間の難問を解いてきたのだろう。
今後、金氏のように日本語に堪能な政治家が生まれてくることは想像できない中、政治対話を改善するためには新たな「共通言語」を持つことが有効だ。
私の提案を述べる。
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