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ベルリンの壁崩壊から30年後の世界

冷戦が閉じ込めていたナショナリズムとグローバリズムという猛獣が暴れるなかで……

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

湾岸戦争に抱いた「夢」

拡大ベルリンの壁崩壊から30年を記念し、市中心部の広場にあるビルの壁に当時の民主化運動などの映像が効果音とともに映し出された=2019年11月4日、ベルリン

 とはいえ、あの頃を思い出すと、米ソ冷戦の終結を受けて、これからはバラ色の未来が訪れると感じた人が多かったように思う。かくいう私もその一人であった。

 そういう楽観的な認識をさらに高めたのは、クウェートに侵攻したフセイン大統領のイラクに、国際社会が結束して戦った湾岸戦争(1991年)であった。アメリカ、ソ連、中国がフセイン大統領を“共通の敵”と見なし、連携して対抗したことで、国連の機能がいよいよ全開するという期待感が広がったのだ。

 私は当時、日ごとに政権への意欲を増していた宮沢喜一氏と「国連常設群の創設を全面軍縮―国際安全保障体制の構築を急げ」という論文に取り組んでいる。この論文は『月刊ASAHI』1991年5月号に掲載された。そんな夢のようなことが現実するかもしれない可能性を感じさせる雰囲気が、冷戦終結の直後にはたしかにあった。

ベルリンの壁にかわる「新しい壁」

 しかし、残念ながら現実はそうはならなかった。それは言うまでもなく、その後の歴史の展開が如実に示している。

 いま、それを象徴するのが、ベルリンの壁にかわる「新しい壁」の出現である。

 冷戦後、とりわけ近年、ヨーロッパでは国と国の間に越境を防止する新しい壁が次々と建設された。その全長は1000キロに達するという。ベルリンの壁の6倍である。

 どうして、そうなったのか?

 やはり、われわれの見通しに甘さがあったと言わざるを得ない。

冷戦が終わって解き放たれた二匹の猛獣

 10年ほど前になるだろうか。私はメディアのインタビューに次のように語ったことがある。

 ――冷戦の檻に閉じ込められていた二匹の猛獣が解き放たれて、われわれはそれをコントロールする力をいまだ備えていない。

 一匹はナショナリズムという猛獣であり、もう一匹は経済のグローバリズムという猛獣である。

 冷戦体制をわれわれは負の体制と見なしてきたが、そこにははからずも、われわれが認識していなかったプラスの側面、重要な役割があったのだ。それは、二匹の猛獣を檻の中に閉じ込めていたということである――。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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