「桜を見る会」が日本政治に突きつけた本当の問題
「国民が認めた」努力に報いる民主主義国家であり続けるかどうかが問われている
米山隆一 衆議院議員・弁護士・医学博士
「推定される事実関係」の不自然な点
この「推定される事実関係」には、普通に考えて、極めて不自然な点が複数あります。
まず、(1)の①ですが、通常ホテルのパーティーコースは複数あり、ホテルは当然それなりの利幅のものをやろうとしますから、「1人5000円」という、後述する通り、仮に可能であったとしても、採算ラインぎりぎりか採算割れになることが必至の値段を提示するのは、考えづらいといえます。
(1)の②も、総額を固定しないホテルのパーティープランは通常考え難いものです(追加料金等の取り決めはありうるとして)。
さらに(1)の③も、800人×5000円は400万円であり、400万円ものパーティーについて手付等が一切ないことは通常、めったにありません。
(1)については、まだ程度問題ですが、(2)の①に関していえば、代金を1円も受け取っていないのに、400万円分もの宛名が白紙の領収書を渡すということは、ほとんどありえないというほど考え難く、ニューオータニがこの様な対応をしていたなら、ニューオータニのコンプライアンス上、いかがなものかと思われます(より詳しくは郷原信郎弁護士の解説参照)。
(2)の④に至っては、ニューオータニのようなホテルが、400万円もの現金を受け取って、計算書、受取書、領収書を一切交付しないという事は社会通念上、極めて考えづらく、これが「真実」であると信ずる人はいないと言って過言ではないでしょう。
もちろん上記の「推定される事実関係」の不自然さは、あくまで不自然さに過ぎず、安倍総理があくまでこの「推定される事実関係」が真実だと主張し続けるなら(主張し続けるのでしょう)、捜査権のない私や国民が、なにかできるわけではありません。とはいえ、通常行われている商取引と比較して、上記の「推定される事実関係」はあまりに不自然かつ不合理な点が多く、それが「真実でないのではないか」という疑念は消えません。
総理にとって「不都合な真実」とは
一方で、こうした疑念を安倍総理がはらすことは、極めて簡単です。
もし上記の「推定される事実関係」が真実なら、通常は(1)の②の時点で見積書・契約書が作成されるか、(2)の④の時点で、総理は受け取っていないと言っていますが、万が一、仮に本当にそれが事実であったとしても、少なくともニューオータニの側では「総額」を計算しているはずであり(400万円ものお金を受け取って、何の計算もしていないとはおよそ考えられません)、総理が求めれば、計算書、受取書、領収書等、何らかの形で総額を示す書面を得る事は容易で(ニューオータニにとっては何程の手間でもありません)、総理がこれを取得して公開すれば、いとも簡単に「推定される事実関係」が「真実」であると証明することができるのです。
にもかかわらず、安倍総理は今に至ってもそれを行っていません。その理由は何か?
考えられることは二つ。(A)そもそも安倍総理の説明自体が「真実」でない。(B)上記の説明自体は真実で、従って(1)の②、(2)の④の書類は存在するか、少なくともそれを取得する事は可能だが、これを公開すると、そこには、より一層「不都合な真実」が記載されている――です。
そして、(1)の②もしくは(2)の④に記載されているであろう「不都合な真実」が、話題となっている「ニューオータニで1人5000円のパーティーが可能か」なのです。
(1)の②、もしくは(2)の④でこの夕食会の総額と人数が確定すると、そこから1人当たりにかかった「実費用」が計算されます。もしこれが5000円を超えると、公職選挙法199条の2の「寄附」に該当し、一年以下の禁錮又は三十万円以下の罰金となってしまうのです。

「桜を見る会」に関する記者の質問に答える安倍晋三首相=2019年11月18日、首相官邸