メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

冷戦終結後の人口流出が招いた東欧の悲劇

ポスト冷戦時代を読む(1) 政治社会学者 クラウス・オッフェさん

三浦俊章 朝日新聞編集委員

ポピュリズム台頭の裏に社会民主主義の衰退

拡大地方選の結果に注目するドイツ右派政党「ドイツのための選択肢」の集会=2019年9月1日、ドイツ東部ウェーダー。野島淳撮影
――今日、ポピュリズムが東ヨーロッパどころか西ヨーロッパ、アメリカなど、世界各地に伝播しています。こうした事態をどう考えますか。

 いまの世界に共通するのは、民族中心的なナショナリズム、新しいタイプの権威主義、人々の素朴な感情に訴える手法、議会制民主主義への不信などです。これらは共通した病理で、根っこにあるのは恐怖心の政治です。

 20世紀において、恐怖の最大のものは戦争への恐怖でした。現在の恐怖は、経済不況、失業、希望の喪失、テロリズム、予測不可能性、人間存在のもろさ、そういったものに対する恐怖です。政治は、この恐怖心を、人々をあおる道具にしている。その結果、恐怖が恐怖を生み、根拠のない恐怖、パラノイア状態が広がった。人間は何かを恐れているときは、ルールを忘れて、自分を守ろう、自分の属する集団を守ろうとする。それがポピュリズムを生んでいるのです。

 重要なのは、ポピュリズムの台頭が社会民主主義の急速な衰退と同時に起こっていることです。ヨーロッパにおいて、社会民主主義は偉大な政治的伝統でした。それは、人々の暮らしを守るという約束だった。社会民主主義がその約束を果たせなくなってしまい、信用を失った。ドイツでも社会民主党は劇的に凋落しています。

――社会民主主義が凋落した背景には、グローバリゼーションの進展があるのでありませんか。一国単位での政策の有効性が失われたことで、福祉国家は破綻しました。

 まさにそれが事実ですね。あわせて基幹産業もこわれてしまった。製造業はドイツでは労働人口の20%まで減りましたが、アメリカは10%、イギリスは9%ですよ。製造業は賃金の安い国へアウトソースしてしまった。

ワイマール共和国の悲劇は再来するか?

拡大ベルリンの壁崩壊から30年の2019年は、短命に終わったワイマール共和国の生誕100年でもあった。ベルリンの歴史博物館ではワイマールの特別展が開かれた。左側はワイマール・デモクラシーを擁護した法学者ハンス・ケルゼン

――ドイツで民主主義が崩壊し、ナチス独裁への道が開かれたワイマール共和国の悲劇は、今後再来するのでしょうか。同じ流れがあると懸念する人たちもいます。

・・・ログインして読む
(残り:約1233文字/本文:約5308文字)

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

三浦俊章

三浦俊章(みうら・としあき) 朝日新聞編集委員

朝日新聞ワシントン特派員、テレビ朝日系列「報道ステーション」コメンテーター、日曜版GLOBE編集長などを経て、2014年から現職。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

三浦俊章の記事

もっと見る