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LINE、ヤフー、そしてソフトバンクへの疑問

超国家企業に対する国家規制のあり方は

塩原俊彦 高知大学准教授

ラインへの疑問

 プライバシー保護という観点からみると、ラインがプライバシー保護で優れているとはとても言えない。

 たとえば情報源を秘匿する必要のある「ニューヨーク・タイムズ」のデービー・アルバ記者はシグナル(Signal)やワッツアップ(WhatsApp)というメッセンジャーを利用している(「ニューヨーク・タイムズ電子版」、2019年9月25日付)。とくに、シグナルはメタデータ(データのデータ)と呼ばれる、会話時間や位置情報などを保持しない政策をとっている。同じ政策をとっているのは、香港の反政府運動でも機密保持に使われているテレグラム(Telegram)くらいしかない。

拡大ヤフーとLINEのスマートフォンアイコン

 ラインもワッツアップもみなメタデータを収集し、それを保管している。第三者とのデータをシェアしていないのは、シグナルとテレグラムだけであり、ラインもワッツアップも、あるいはバイバー(Viber)もフェイスブック・メッセンジャーも第三者とのデータ交換を行っている。つまり、これらはシグナルやテレグラムに比べて情報遺漏の可能性が高い。なお、ここでの記述は国際赤十字委員会の報告書(Humanitarian Futures for Messaging Apps, 2017)に基づいているから信頼できるはずだ。

 筆者の授業を受けている学生やゼミ生にはシグナルを推奨している。ラインよりもずっとプライバシー保護が徹底しているからだ。2013年に米国政府の諜報活動の実態を暴露したエドワード・スノーデンは国家安全保障局(NSA)などと民間会社との個人情報協力を明らかにしたが、その段階でメッセンジャー・アプリのなかで暗号化による情報漏れの防止措置をとっていたのはシグナルやウィッカー(Wicker)くらいであった。

 本人の了解なしに当局に情報提供していたアップルやフェイスブックが末端間の暗号化に乗り出すのはスノーデンによる暴露後のことにすぎない。ちなみに、シグナルに切り替えても、ラインと利便性はほとんど変わらないようだから、今後、プライバシー保護への関心がもっと広がれば、それと反比例するようにライン利用者の数が減るはずだ。

 日本人の過剰な同調性の結果なのか、プライバシー保護に十分配慮しているとは言えないラインがなぜかシェアNo.1のメッセンジャーに君臨していることになる。同じくラインがシェア第1位の台湾やタイも同調性が高いことがラインの優位につながっているのかもしれない。もっと個人保護に万全を期そうとしているシグナルやテレグラムが知られるようになれば、もっと冷静な利用が広がるだろう。

ヤフーへの疑問

 筆者はヤフー検索を使わない。グーグルのほうが英語やロシア語での検索結果が明らかに充実しているからである。

 グーグルが2019年11月に発表した、検索エンジンの言語処理モデル(BERT)へのアップデートによって、長文での検索が文脈とより整合性ともつようになることから、グーグルとヤフーとの検索機能の差はますます広がるだろう。ただし、グーグルは検察エンジンを動かす手順であるアルゴリズムを操作して検索結果を歪めているとの批判がある(2019年11月15日付の「ウォールストリート・ジャーナル電子版」)。

 加えて、グーグルを利用すると、広告がたくさん画面に表示されるので、これを避けるために、ダックダックゴー(DuckDuckGo)もよく利用する。プライバシー保護への配慮がグーグルやヤフーに比べて優れているからである。

 検索エンジンについても、日本でなぜヤフー検索の利用者が多いのか、筆者には理解できない。おそらくここでも過剰な同調性から、機能のよしあしやプライバシー保護などの観点が蔑ろにされて何となくヤフーを使っている人が多いのではないか。そうであるならば、検索エンジンについてもダックダックゴーのようなものの利用者が増えてほしいと思う。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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