ソフトバンクへの疑問
ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は投資家である。2018年10月に起きた、サウジアラビア人ジャーナリスト、ジャマル・ カショギ殺害事件にもかかわらず、彼はその殺害にかかわったとされるムハンマド・ビン・サルマン皇太子とともに10兆円規模の「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」(SVF)を運営している。カネのためには何でもするのだろうか。

来日したサウジアラビアのサルマン国王(中央左)との会談を終えた孫正義氏=2017年3月14日、東京都千代田区
おまけに、ソフトバンクグループは2018年3月期に法人税を支払っていない。英国の半導体設計会社、アーム・ホールディングスの買収後、その下部の一部をSVFに現物のまま譲渡した際、時価評価額が低くなったため税務上の欠損金が生じた結果だ。ただし、実際に損失が出たわけではなく、あくまで会計処理の結果であり、こうすることで法人税を免れたわけだ。
もっとも大きな疑問は、親会社のソフトバンクグループ、その子会社のソフトバンクとヤフーがいずれも上場されている点である。
親会社と子会社の証券取引所への同時上場は制度として日本では認められているものの、欧米ではほとんど認められていない。親会社と子会社との間で、債権債務を恣意的に移動して節税に利用したり、子会社の上場で得た資金で自社株買いを行い、意図的に親会社の株価を引き上げたりする操作が簡単にできるようになるからだ。
もちろん、ソフトバンクだけが親子上場会社であるわけではない。親会社である日本郵政、子会社のゆうちょ銀行とかんぽ生命保険が上場している日本郵政グループで、相次ぐ不祥事が発覚した。「親子上場」を平然と行う経営者そのものに何か大きな欠陥があるのではないかと思えてくる。
米国で強まるメッセンジャーへの圧力
実はいま、米国ではメッセンジャーサービスを行う会社に対する情報開示協力の要請が強まっている。
2019年11月19日付の「ニューヨーク・タイムズ電子版」によると、ウィリアム・バー司法長官は最近、フェイスブックのマーク・ザッカーバーグ最高経営責任者(CEO)に対して同社が所有するワッツアップの末端間の暗号化と同じように、フェイスブック・メッセンジャーやインスタグラムを暗号化する計画を止めるように圧力をかけた。
すでに、英国では同国の企業の暗号化されたデータを解除するキーを警察などの法執行機関に渡すことを強制する2016年制定の「捜査権力法」や、それに基づいて2018年、オーストラリアでも同様の機関に暗号化されたデータへのアクセスを提供するよう求める法律が制定されている。
ラインの暗号化は2015年のテキストや位置情報の通信経路上での暗号化にはじまったが、その末端間の暗号化は2016年8月以降、順次拡大していった。おそらく欧米で起きているメッセンジャーへの暗号解除圧力はラインにも強まるだろう。問題は、ラインがこうした政府当局の圧力に屈しないかにある。信頼できる経営者がいなければ、利用者は守られないだろう。