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「アラブの春 第2弾」はすでに始まっているのか

川上泰徳 中東ジャーナリスト

国民の3分の1が貧困層、エジプトでも反政府デモ

 国際ニュースとしてはほとんど注目されなかったが、エジプトで9月20日、シーシ大統領が率いる軍主導政権に反対する若者たちのデモがあった。2013年の軍事クーデターで軍主導政権ができて6年目に起こったデモである。

 エジプトは「アラブの春」で大統領が辞任するという民衆革命が起きた国である。その後、2012年に民主的な選挙で、イスラム政治組織「ムスリム同胞団」系の大統領が選出されたが、軍のクーデターで排除された。そのクーデターを主導した国防相が、現在のシーシ大統領である。

 シーシ政権は同胞団を「テロ組織」に指定し、社会から排除することを「テロとの戦い」として進めてきた。同胞団の指導者は刑務所にいるか、国外に逃げているかのどちらかで、9月のデモには同胞団は参加していない。

 エジプトのメディアはデモを伝えていない。だが、カタールの衛星テレビ、アルジャジーラが9月20日(金曜日)の夕方から深夜にかけて、カイロ、アレクサンドリア、ドミヤッタ、スエズなど、エジプトのほとんどの都市で起こったデモ参加者が携帯電話で撮影した映像を流していた。デモは1週間後の27日の金曜礼拝の後にもあったが、小規模にとどまり、カイロやアレクサンドリアの主要道路には治安部隊が警戒にあたり、抑え込まれた。

9月20日夜、アルジャジーラテレビで流れたカイロ中心部のタハリール広場に集まった若者たち拡大9月20日夜、アルジャジーラテレビで流れたカイロ中心部のタハリール広場に集まった若者たち

 デモの背景となったのは、7月末にエジプトの中央動員統計局が2017/18年の貧困率を32.5%と発表し、人々に衝撃を与えたことだった。エジプトの貧困ラインは「1か月44.5ドル=1日1.5ドル」以下の収入と定義されているが、この貧困率が2015年の27.8%から4.7ポイント上昇し、国民の3人に1人が貧困という事実が突き付けられた。2011年のエジプト革命後の混乱の中でも25%台だったことを考えれば、貧困層は国民の4分の1から3分の1に増加していることになる。

 貧困層が広がった理由として

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筆者

川上泰徳

川上泰徳(かわかみ・やすのり) 中東ジャーナリスト

長崎県生まれ。1981年、朝日新聞入社。学芸部を経て、エルサレム支局長、中東アフリカ総局長、編集委員、論説委員、機動特派員などを歴任。2014年秋、2度目の中東アフリカ総局長を終え、2015年1月に退職し、フリーのジャーナリストに。元Asahi中東マガジン編集人。2002年、中東報道でボーン・上田記念国際記者賞受賞。著書に『シャティーラの記憶――パレスチナ難民キャンプの70年』(岩波書店)、『イラク零年――朝日新聞特派員の報告』(朝日新聞社)、『現地発 エジプト革命――中東民主化のゆくえ』(岩波ブックレット)、『イスラムを生きる人びと――伝統と「革命」のあいだで』(岩波書店)、『中東の現場を歩く――激動20年の取材のディテール』(合同出版)、『「イスラム国」はテロの元凶ではない――グローバル・ジハードという幻想』(集英社新書)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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