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未来をかけた“戦場”と化した香港で起きている事

香港の将来像を描いたオムニバス映画『十年』を手がけた蔡廉明さんに聞く

吉岡桂子 朝日新聞編集委員

 国際金融都市の香港が、自らの未来をかけた“戦場”と化している。街中を催涙弾と火炎瓶が飛び交い、24日に予定される区議会議員の選挙が、かつてない注目を集める。中国の影響力が強まっていく香港の将来像を描いたオムニバス映画『十年』の“世界”を、現実が早送りで追い越していくようだ。4年前に上映され、話題を呼んだこの映画のプロデューサー、アンドリュー・チョイ(蔡廉明)さん(48)に、香港の現状について聞いた。チョイさんからは、未来を楽観できないとしつつ、それでもいつか、若者の希望を描きたいという言葉が返ってきた。(聞き手 吉岡桂子・朝日新聞編集委員)

拡大アンドリュー・チョイさん=2019年10月、香港・佐敦、吉岡桂子撮影

アンドリュー・チョイ(蔡廉明)
1971年生まれ。デジタルメディアや映像プロダクションを経て、若者たちの映画撮影を支援している。プロデューサーとして携わった『十年』は香港のアカデミー賞とも呼ばれる「香港電影金像奨」(2016年)を受賞した。

デモは香港の核心的価値を守る戦い

――24日の区議会選挙で、香港政府は一部の民主活動家の立候補を認めず、治安の悪化を理由に延期も示唆してきました。

 選挙は絶対に実施すべきだと思ってきました。香港社会にとって民意を表現する場として大切な機会だからです。政府に反対する立場をとる候補者が得票数や議席を伸ばすと予測されますが、政府を支持する候補者を上回るかどうか。しかも、区議会選挙ですので、香港が抱える問題を大きく動かす力はない。それでも、政府は結果を非常に恐れている。彼らは民意が怖いのです。

 2014年に起きた「雨傘運動」は、真の選挙権を求めて起こした運動でした。中国共産党は17年までに普通選挙を導入すると約束したのだから果たせ、と。残念ながら、成果を得られませんでしたが。これに対して、(刑事事件の容疑者を香港から中国大陸に引き渡すことを可能にする)逃亡犯条例をきっかけに6月から始まった今回のデモは違います。香港にすでにいま存在している核心的な価値、つまり自由や安全、人権や法治をもぎとられないように続けている戦いなのです。失うと香港ではなくなってしまう。だからこそ、多くの人が街に出て、声を上げたのです。

 法治がない中国大陸に恣意(しい)的に連れていかれて、恣意的な裁判を受けるかもしれない。これは恐怖です。香港では2015年に、中国共産党の意に沿わない本を扱っていた書店関係者が拘束された事件もおきている。米国の中央情報局(CIA)の陰謀だとかカラー革命だとかと中国政府は言っているが、ピントがずれすぎていて腹が立ちます。

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筆者

吉岡桂子

吉岡桂子(よしおか・けいこ) 朝日新聞編集委員

1964年生まれ。1989年に朝日新聞に入社。上海、北京特派員などを経て、2017年6月からアジア総局(バンコク)駐在。毎週木曜日朝刊のザ・コラムの筆者の一人。中国や日中関係について、様々な視座からウォッチ。現場や対話を大事に、ときに道草もしながら、テーマを追いかけます。鉄道を筆頭に、乗り物が好き。バンコクに赴任する際も、北京~ハノイは鉄路で行きました。近著に『人民元の興亡 毛沢東・鄧小平・習近平が見た夢』(https://www.amazon.co.jp/dp/4093897719)

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