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GSOMIA継続は一時凌ぎ。韓国が目指すのは…

予想外だった破棄の「停止」。武器調達の面から浮かび上がる対米自立の路線

高橋 浩祐 国際ジャーナリスト

背景にトランプ政権の最大限の圧力

 韓国の方針転換の背景にいったい何があったのか。詳細は今後徐々に明らかになっていくと思われるが、11月23日午前0時にGSOMIAの失効が迫るなか、トランプ政権が文政権に最大限の圧力をかけたのは間違いない。特に、韓国大統領府(青瓦台)の金鉉宗(キムヒョンジョン)国家安保室第2次長が11月18日からワシントンを2泊3日間で訪問、ポッティンジャー国家安全保障担当大統領副補佐官らとGSOMIAへの対応について協議したのが注目される。

 金氏は、国防力強化で韓国の自立を掲げる「民族・自主派」の一人で青瓦台の中でも影響力が強く、8月のGSOMIA破棄決定でも大きな役割をはたしたとみられている。米韓FTA交渉の責任者などを務めたタフネゴシエーターでもあり、日米といった大国への対抗意識が強いことで知られている。

 いわば韓国の民族派切り込み隊長とも言える金氏が、直近の訪米中にアメリカ政府高官からGSOMIA延長に向けて、あらためて強くネジを巻かれたと筆者はみている。金氏は帰国後の21日に開催された国家安全保障会議(NSC)常任委員会で訪米の結果を説明した。その中で、GSOMIA延長を求めるアメリカの厳しい姿勢を伝えたのだろう。

 この間、文政権に批判的な韓国の「朝鮮日報」は21日、トランプ政権から文政権への脅しとも取れる強烈な報道をした。米韓防衛費分担金特別協定(SMA)に向けた交渉で、アメリカはこれまでの5倍に相当する防衛費負担を韓国に求めているが、韓国がこれに応じない場合に備え、朝鮮有事の際、地上戦に投入される在韓米軍主力部隊の一個旅団約4500人を、トランプ政権が撤収する方向で検討を行っていると伝えたのだ。

 アメリカ国防総省は同日、この在韓米軍一部撤退の朝鮮日報の報道を否定したが、火のないところに煙は立たない。文政権にとっては、かなりの圧力になったはずだ。

日韓のメンツを立てる「玉虫色」決着

拡大GSOMIA問題で開かれた日米韓防衛相会談を前に手をつなぐ(左から)韓国の鄭景斗国防相、米国のエスパー国防長官、河野太郎防衛相=2018年11月17日、バンコク

 今回の韓国のGSOMIA延長は、日韓両国のメンツを立てる「玉虫色」の決着ともなった。

 韓国側は、日本の輸出規制をめぐり、「日本から局長級対話再開という譲歩を引き出せた」と国内向けに主張できる。実際、康京和(カンギョンファ)外相は22日、「目標である輸出規制措置の撤回のための土台ができた」と述べた。

 かたや日本側は「韓国の世界貿易機関(WTO)提訴手続きの停止とGSOMIA延期で、韓国が折れた。日本は何も譲歩していない」と主張できる。筆者はアメリカの圧力を受け、韓国が実質上かなりの譲歩をしたとみるが、両国政府が国内向けに都合よく解釈し、説明できるという意味では、見事な合意だった。

 いずれにせよ、北朝鮮の核ミサイル戦力増強や、世界初公開の極超音速滑空ミサイルDF(東風)17に象徴される中国の急激な軍事的台頭を踏まえれば、日韓、そして日米韓が防衛協力のパイプをできるだけ太く維持しておくことは必要不可欠だ。

 日韓の外交交渉の「勝った、負けた」の話ではなく、東アジア全体の厳しい安全保障を大局的に考えることが肝要だろう。さもなくば本当の勝者はいずれ中朝ロになりかねない。

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筆者

高橋 浩祐

高橋 浩祐(たかはし・こうすけ) 国際ジャーナリスト

英国の軍事専門誌「ジェーンズ・ディフェンス・ウィークリー」東京特派員。1993年3月慶応大学経済学部卒、2003年12月米国コロンビア大学大学院でジャーナリズム、国際関係公共政策の修士号取得。ハフィントンポスト日本版編集長や日経CNBCコメンテーターを歴任。朝日新聞社、ブルームバーグ・ニューズ、 ウォール・ストリート・ジャーナル日本版、ロイター通信で記者や編集者を務める。

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