中国における高齢化問題の現状

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中国の高齢化問題は、世界の高齢化問題研究者の注目の的であり、誰もが日本以上のインパクトを予想してきた。そこでまず、IMF、国連(世界人口予測)、中国政府(都心部家計貯蓄、都心部家計収入、健康滋養の各統計)などのデータを総合し、その実態を示したい。
中国の人口は現在14億人弱。うち60歳以上は2憶5千万人、65歳以上は1億6千万人である。2050年には全体人口が13億人強まで減少するなか、60歳以上が5億人となり人口の36%、80歳以上も1億2千万人と9%を占めると予想されている。
大きな理由は、(都市部に限ってみても)中国人の平均寿命の伸びである。1990年の68歳から伸び始め、2010年には74歳になり、今も伸び続けている。中国の医療事情は日本と比べて見劣りするものの、国民自身の健康志向の高まりもあって、寿命が順調に伸びているのだ。
一方、家計貯蓄は95年(15%)から増加し始め、2009年には28%を超えるに至っている。中国は、日本と同様、高齢化の進展で運営が困難になった年金制度の(国民にとってはマイナスの)改革を行ったが、これに中国民が反応したことが大きく影響している。結果として、増加分全体の41%の押上げ効果を発揮している。
この間、一人当たり週間労働時間は、1996年の42時間から2003年に46時間に伸びている。IMFの論考が、多くの経済学者から非効率と批判されてきた国有企業の労働者が、2000年前後の大幅なリストラに危機感を感じ、(リストラされなかった人達が)自ら労働時間を増やしていると指摘している点が興味深い。
まとめると、人口が減少に転じるなか、高齢者人口が増加を続けることで、高齢化スピードは日本をはるかに上回っている。さらに、日本に比べて、そもそも生活支援度の低い年金システムの助成力低下もあって、労働時間も貯蓄も増やして生活防衛をはかっている。それが中国の現状であろう。
日本をはるかに上回る深刻さ
医療や衛生面の差を考えれば、都市部の方が、高齢人口が多いと予想できるため、このデータは農村部まで含めるとやや緩和されるかもしれない。しかし、基本的に日本とは比べものにならないほど、高齢化の影響が深刻なのは間違いない。
中国人民大学など複数の国立大学が「中国老年社会研究調査」を発表しているが、それらによれば、60歳以上の高齢者のうち、何らかの補助を必要とする人の割合は、都市部より地方・農村部のほうが高い。また、生活の現代化(電気・上下水道の整備や家電製品等の導入)も遅れている地方の高齢者の生活のほうが、都市部より厳しい状況にある。
中国政府は、こうした高齢者人口比率の上昇と、個人の努力では賄いきれない高齢者の生活水準の向上に向けた政策を求められている。