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女性・女系天皇は不可避~実際の皇位継承順位は?

「安定的皇位継承」の議論先送りは許されない

登 誠一郎 元内閣外政審議室長

男系男子にこだわる理由は何か

 安倍首相は今国会における代表質問において、「安定的な皇位継承は国家の基本にかかわる極めて重要な課題であり、男系継承が古来例外なく維持されてきたことの重みを踏まえ、慎重かつ丁寧に検討を行う必要がある」旨の答弁を行った。

 確かに男系継承はこれまでの伝統であるが、歴史的事実を見ると、過去に8名の女性天皇が実存し、また女系天皇はいないものの、江戸時代以降の約400年の間に即位した19名の天皇のうち、嫡出の天皇は、明生、昭和、現在の上皇、現在の天皇の4名のみであり、それ以外の15名の天皇はすべて側室から誕生している。現在の皇室典範上は非嫡出子は皇族となれず、また一般的にも少子化が進む日本の現状に鑑みると、今後、皇位継承資格のある皇族が産まれるか否かも定かではない。

 また唯一の未婚の継承資格者である悠仁さまと将来結婚される方にとって、男子を産まねばならないというプレッシャーが高まることは、想像に難くない。

 皇位継承者は男系男子に限るという皇室典範の規定は、明治22年に制定された大日本帝国憲法と同時に立法化されたものであるが、当時の日本社会における女性の地位は圧倒的に低く、相続権も参政権もなかった。このような背景で生まれた皇位継承の「伝統」が、男女平等と男女の共同参画を社会の重要原則の一つとして掲げる今日の日本において、果たして正当な存在理由を有するのであろうか?

 一方、眼を海外に向けると、ベルギー、オランダ、スウェーデンなどの欧州のすべての王国において、1980年ごろ以降は、それまで男子のみ、或は兄弟姉妹間では男子優先であった王位継承権が、男女平等に変更された。英国は17世紀のイングランド王ジェームズ1世以来、王位継承に男女の区別はない。タイにおいても、1974年の憲法改正により女子の王位継承が認められた。

 以上総合すると、21世紀の現在、皇位継承を男子にしか認めていない国は、一般社会において男女差別が種々の形で残存する中近東の王国以外は日本のみと考えられる。

拡大市街地を見渡せるハイキングコースを散策する秋篠宮ご夫妻と長男悠仁さま=2019年8月20日、ブータン・ティンプー

皇室典範に関する有識者会議の報告と提言

 皇位継承資格者の皇族数が目に見えるように減少し始めたことを受けて、2004年に小泉内閣において、「皇室典範に関する会議」が設けられ、皇位の安定継承を維持するために必要な検討が行われた。

 翌年11月にその報告書が提出されたが、その主な内容は、①女性天皇・女系天皇を認める、②皇位継承順位は、男女を問わず長子を優先する、③女性皇族は婚姻後も皇族の身分にとどまる(即ち女性宮家の設立を認める)、との諸点の提言である。

 この会議は、皇位の安定的な継承を維持するための方策として、1947年に皇籍を離れた旧皇族の皇籍復帰の可能性も検討した。しかし、その時点で既に60年近くを一般国民として過ごし、また現天皇との共通の祖先は約600年前の室町時代までさかのぼる遠い血筋であることを考えると、国民の多くがこれらの人々を皇位継承資格者の皇族として受け入れるかとの懸念が示されて、この案は提言に含まれなかった。

 小泉首相はこの有識者会議の提言を基に皇室典範の改正案を策定して、国会に提出する準備を進めていたが、2006年2月初めに秋篠宮妃の紀子さまのご懐妊が発表されたことを契機に政府は慎重な対応に転じた。そして同年9月の悠仁さまの誕生により、小泉首相は皇室典範改正法案の国会提出は見合わせる旨を明言した。

 2012年には野田内閣が女性宮家創設の論点整理をまとめたが、その後の安倍内閣は、女性宮家の創設は女性・女系天皇につながる恐れが強いとして、この点についても慎重な姿勢を貫いている。

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筆者

登 誠一郎

登 誠一郎(のぼる・せいいちろう) 元内閣外政審議室長

兵庫県出身。東京大学法学部卒業後、外務省入省(1965)、駐米公使(1990)、ロサンジェルス総領事(1994)、外務省中近東アフリカ局長(1996)、内閣外政審議室長(1998)、ジュネーブ軍縮大使(2000)、OECD大使(2002)を歴任後、2005年に退官。以後、インバウンド分野にて活動。日本政府観光局理事を経て、現在、日本コングレス・コンベンション・ビューロー副会長、安保政策研究会理事。外交問題および観光分野に関して、朝日新聞「私の視点」、毎日新聞「発言」その他複数のメディアに掲載された論評多数。

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