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香港区議選の民主派圧勝と香港人権法成立で中国は

民主派の要求を阻止するのは至難の業。日本の国会も明確な意思表示を

田中秀征 元経企庁長官 福山大学客員教授

選挙結果を予想できなかった香港・北京政府

拡大香港の区議会選挙で、投票を終え報道陣の質問に答える林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官(手前)=2019年11月24日、香港・中環
 香港政府や北京政府は、ここまで劇的な選挙結果を予想だにしなかったのではないか。情勢を完全に読み間違えたのであろう。

 「平和的に選挙を実施できたことを大変うれしく思います」

 林鄭月娥(キャリー・ラム)行政長官が選挙の当日、投票所で笑みを浮かべて、次のように語っていたのは、何よりの証左だ。

 北京政府の認識も同じようなものだっただろう。選挙結果を受けてコメントを求められた王毅外相の慌てぶりは、それを物語っている。だから中国のメディアは、選挙結果の速報を具体的な数字をあげて伝えるのをためらったという。

「雨傘運動」から何を学んだか

拡大当選を決め、投票所の外で支持者とともに「五大要求は一つも欠けてはならない」などと叫ぶ「民間人権陣線」代表の岑子杰さん(右)=2019年11月25日、香港・沙田
 5年前の「雨傘運動」から民主派と政府が何を学んだのかが、勝敗を分けたところがある。

 民主派は、5年前の失敗の主たる理由を「武闘派」と「穏健派」の内部分裂にあると総括し、今回の抗議デモでは分裂を回避することに努めた。

 一方、北京や香港政府は、デモが長引けば、いずれ一般市民の間に批判的な空気が強まり、武闘派はさらに暴力的になって、一般学生などは参加しなくなる、と読んでいたのであろう。ところが、デモは続き、内部分裂も起こらなかった。

 区議選についても、デモはともかく、たかが区議選がそれほど盛り上がることはない。区議選が終われば、香港は次第に静かになるだろう、と踏んでいたのではないか。

 しかし、「雨傘」のときとは異なり今回、学生や青年層の決意は、そんな中途半端なものではなかった。

 11月11日に警官に銃撃された学生(21)は記者会見を開き、こう語っている。

 「民主とか自由とかいうのは、根本的で基本的なもの」であって、「私たちは命と交換ではなく、自然に政府が私たちに与えるべき権利」だと。

 彼は警官に特別に狙われて撃たれたわけではない。たまたま、標的になってしまっただけのことだ。そんなごく普通の学生が、このような考えと覚悟を持って参加している。そして、彼らは香港ばかりではなく、中国を自由で民主的な国に転換していく原動力だ。それが、北京や香港政府には見えていなかったのだ。

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筆者

田中秀征

田中秀征(たなか・しゅうせい) 元経企庁長官 福山大学客員教授

1940年生まれ。東京大学文学部、北海道大学法学部卒。83年衆院選で自民党から当選。93年6月、自民党を離党し新党さきがけを結成、代表代行に。細川護熙政権で首相特別補佐、橋本龍太郎内閣で経企庁長官などを歴任。著書に『平成史への証言 政治はなぜ劣化したのか』(朝日選書)https://publications.asahi.com/ecs/detail/?item_id=20286、『自民党本流と保守本流――保守二党ふたたび』(講談社)、『保守再生の好機』(ロッキング・オン)ほか多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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