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終末期に入った安倍政権を揺さぶる分断と対立

首相の親衛隊チームと一般行政官僚チームとの間で高まる緊張関係

牧原出 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

「鉄壁の守り」にならない菅官房長官

 辞任した2人の大臣は、菅義偉官房長官の側近であった。9月の内閣改造で際立った「菅系」の勢力は勢いを削がれた。だが、その一方で安倍首相側近の下村元文科相が推進してきた民間英語試験導入の延期決断は、菅官房長官のもとで進められた。さらに、安倍首相夫妻の不祥事である「桜を見る会」は、まずは菅官房長官の直下にあり、会のとりまとめは内閣府が手がけている。

 確かに内閣府は、首相枠の招待者名簿を共産党議員からの質問が届いた直後に廃棄するなど、首相をかばってはいるが、小出し小出しに野党側の要求を認めてもいる。森友学園問題の際、事実と異なる答弁を堂々としてその場を収めた佐川宣寿・元国税庁長官のようには振る舞っていない。菅官房長官も最後まで首相を守るという姿勢ではなく、「指摘はあたらない」「答えない」という形の守勢が目立つ。そこには鉄壁の守りはみえない。

 かつて「政権チーム」が強固だったときは、党役員・閣僚が全体として首相を支え、官邸では官房長官と首相秘書官・官邸官僚とが一体となっていた。ところが今回は、二階俊博幹事長も名簿破棄を批判するなど、政権を半ば外側から見ている風である。菅官房長官の首相とその側近に対する立ち位置も、純然たるインナーではなく、やや外よりにみえる。

拡大記者会見でメモを受け取りながら質問に答える菅義偉官房長官=2019年12月4日、首相官邸

変容した政権チームの構図

 問題の根底は、首相とその側近からなるチーム編成にある。

 以前は、今井尚哉首相秘書官を筆頭とする秘書官グループ、杉田和博内閣官房副長官と北村滋内閣情報官といった公安警察系統の官僚グループ、谷内正太郎国家安全保障局長が率いる外交・安全保障グループの三つのグループがあり、それを菅官房長官が各省の人事権とともにコントロールしていた。その構図がここにきて変容している。

 辞任した谷内国家安全保障局長の後任が、外務省から選ばれず、警察庁出身で首相との会合回数が多い北村内閣情報官が抜擢(ばってき)された結果、今井・杉田・谷内というある種の多様性とバランスのとれた構成が、今井・杉田・北村という経産・警察色の強い構成となった。今井秘書官についてしばしば言われる、首相の威を借りる乱暴な指示、無理筋な政策形成といった性格が色濃くなりそうな布陣である。

 ここで紹介したいのは、ロシアの現代作家ウラジーミル・ソローキンのディストビア小説『親衛隊士の日』である。

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筆者

牧原出

牧原出(まきはら・いづる) 東京大学先端科学技術研究センター教授(政治学・行政学)

1967年生まれ。東京大学法学部卒。博士(学術)。東京大学法学部助手、東北大学法学部教授、同大学院法学研究科教授を経て2013年4月から現職。主な著書に『内閣政治と「大蔵省支配」』(中央公論新社)、『権力移行』(NHK出版)など。

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