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令和元年に見えた「変わらない日本」の実態と課題

社会を覆う奇妙なほどの安定。外部ショックを隠す安倍政権。2020年はどうなる?

三浦瑠麗 国際政治学者・山猫総合研究所代表

安定性が際立つ「変わらない日本」

 今の日本社会にみられるある種の安定性は、明らかに内政の混乱期に突入している欧州や米国などの先進諸国に比べて、際立っています。まさしく「変わらない日本」なのです。

 少しずつしか変化が起きない日本には、歯がゆさを感じるものの、それが大きな分断や動乱を回避してきたことも、また確かです。政治の混乱に疲れ切った欧州や米国は、日本に学びたいとさえ思っているかもしれません。

 このように連綿と歴史が続いてきたかに思える日本ですが、だからといって、必ずしも価値観が連続していたわけではありません。

 現在、昔からの日本の伝統のように言われているものの多くは、大して長い歴史を持つものではない。たかだか近代以降に取り入れられたものにすぎません。たとえば、中央集権のあり方や、専業主婦というライフスタイル。これらは明らかに近代以降に導入されたものです。

状況依存的に変化に対応してきた保守政治

 「悠久の歴史」を持つ日本ですが、実はそのときにおかれた内外の環境によって、さまざまな変化が進行してきました。最近では、少子高齢化を受けた社会保障の変容であり、中国の台頭や米国からの圧力による日本の立ち位置の変化であり、女性の社会進出と外国人労働者の導入による多様化の進展です。

 日本の保守政治は、このような変化に対して、状況依存的に対応してきました。綿密な根回しを通じて、どこまでの改革案を通せるか。どれほどの財政規律を目指すのか、米国の要求にいかほど応じるのか。今年税率が10%に引き上げられた消費税をはじめ、この数年、政治問題化してきた案件は、このような内外の環境変化に、政治が一周回ずつ遅れながら対応してきたものにすぎなかったといえます。

 目に見えるかたちで表出している「政局」やスキャンダルとは異なる世界が、「永田町」には存在しているのです。たいていの問題について、日本では、先鋭な改革派も頑迷なイデオロギーも存在しない。そこで幅をきかすのは、利害調整の政治です。

拡大自民党本部

与野党の政策に大きな違いなし

 利害調整の政治に終始する限り、与野党の政策目標もアプローチも、さほど大きな違いは現れません。それだからこそ、政策ではなく、「政局」ばかりがそうした対立を代表してしまうのではないでしょうか。

 安倍晋三総理は民主党政権を「悪夢」と表現しましたが、実際のところ、民主党政権で目指された政策の多くは、現在に受け継がれています。そして、民主党政権もそれ以前の自民党政権時代に存在していた改革思想を受け継いでいました。

 具体的に言えば、民主党政権下でも行われた規制改革会議は、2007年の発足以来行われてきたものと精神や政策課題はさほど変わっておらず、連続性があります。民主党政権は、同じ課題に少し大胆な提案をしたり、少々異なるアプローチを取ったりして対応したにすぎず、方向が大きく異なるものであったとは思えません。

 むしろ、菅直人総理(2010年当時)が野党・自民党が打ち出した消費税10%の提案を独断で取りこみ、民主党政権の方針として打ち出して波紋を呼んだように、党内でのすり合わせができないままに野心的な政策を目指したことこそが、民主党政権の失敗の原因だったのだと思われます。

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筆者

三浦瑠麗

三浦瑠麗(みうら・るり) 国際政治学者・山猫総合研究所代表

1980年神奈川県茅ケ崎市生まれ。東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了、博士(法学)。専門は国際政治、比較政治。東京大学政策ビジョン研究センター講師などを経て現職。著書に『シビリアンの戦争―デモクラシーが攻撃的になるとき』(岩波書店)、『「トランプ時代」の新世界秩序』(潮新書)、『あなたに伝えたい政治の話』(文春新書)など。政治外交評論のブログ「山猫日記」を主宰。公式メールマガジン、三浦瑠麗の「自分で考えるための政治の話」をプレジデント社から発行中。共同通信「報道と読者」委員会第8期、9期委員、読売新聞読書委員。近著に『21世紀の戦争と平和 徴兵制はなぜ再び必要とされているのか』(新潮社)。

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