令和元年に見えた「変わらない日本」の実態と課題
社会を覆う奇妙なほどの安定。外部ショックを隠す安倍政権。2020年はどうなる?
三浦瑠麗 国際政治学者・山猫総合研究所代表
ルールメイキングをめぐる議論を
誰がどういった改革を担うのか。究極的に見れば、これこそが争うべき物事の本質であり、権力闘争の目的のはずです。長期政権となった安倍政権には、さまざまなスキャンダルや綻(ほころ)びが存在します。そういうときにこそ、単に政権を倒すということだけでなく、ルールメイキングをめぐる議論へと誘導していかなければならない。
たとえば「桜を見る会」を問題にするならば、政治資金収支報告書にはこのように記述すべきだというルールをつくるべきです。公文書の問題は、これをどう保全するのかという観点から考えていくアプローチが必要です。
「桜を見る会」で浮上した行政文書の定義をめぐる問題は、日本における公文書管理のいい加減さをあらためて浮き彫りにしました。米国では、公文書は政府の活動の記録であり、国民の財産であるという考え方に基づき、もっと積極的に活かしています。公文書を一般の人々に向けてわかりやすく展示する試みも活発ですし、人びとの権利意識も強い。
米国でも、前回の大統領就任式の観覧席のチケットが誰に送られたのかが話題になった際、文書が残されておらず分からずじまいとなっており、すべてのデータが残っているというわけではありません。それがスキャンダル化するということもありませんでした。しかし、日米の違いは、米国は本質的な政策過程をめぐる文書はきちんと残しているということ。
「桜を見る会」の招待客リストについては、実際には行かなかった招待客も含まれているはずですし、プライバシーの観点も問題となります。あらゆる公文書がすぐに開示されるべきだとは思いませんが、記録を取らない、あるいはすぐに廃棄するという習慣は、これを機会に改めるとともに、有権者の財産としてこれをいかすルールをつくるとよいのではないかと思います。
日本に破綻のリスクはあるか
権力闘争は繰り広げられても、なかなか政権交代に繋がらないという日本特有の問題はいったんおいて、今後の課題として興味深いのは、時代の変化が進む中で、「変わらない日本」が破綻(はたん)することはあるのか、もし破綻するとすれば、そのきっかけは一体何だろうかということです。
常識的に考えれば、そのきっかけは、政治的、経済的あるいは安全保障上の外部ショックということになるでしょう。後述するように、私はすでに一部の外部ショックは日本に降りかかっているが、政権がそれをあからさまにしないことで、表立った問題になっていないのだと考えています。
安倍政権が通算で憲政史上最長の政権となったのが今年の11月でした。そろそろゴールが見えてきた長期政権の日本政治史における意味合いを探る作業も、これから活発になるでしょう。
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