山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト
元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
フランスの環境政策に影響を与えたニコラ・ユロ前環境移行連帯相から学ぶべきこと
スペイン・マドリードで12月3日から13日まで地球の環境問題を地球規模で論じる第25回国連気候変動枠組み条約締結会議(COP25)が開かれている。日本からは小泉進次郎・環境相が出席、11日には日本政府代表として演説する予定だが、国際舞台レビューとなったニューヨークでの気候行動サミットでのスキャンダラスな「セクシー発言」の二の舞いはしてもらいたくない。
クリスタル夫人の父親の祖国フランスには、ニコラ・ユロ(64)という元環境相がいる。自らのブログで“同士”と呼んだ夫人からは、フランス人なら誰でも知っている本物の「環境活動家ユロ」のことを多少なりとも聞いていると思うが、ここで紹介したいと思う。どこがどう違うのか、夫人と大いに論じてもらいたいところだ。
2017年5月に発足したマクロン政権の目玉閣僚だったユロ環境移行連帯相が、就任から1年余の18年のバカンス明けに突然辞任した際は、支持率が下がっていた政権をもろに直撃するかたちになった。フィリップ首相はフェイスブックに「文明の崩壊の真の可能性を引き起こした」と書き、その辞任を嘆いた。「文明の崩壊」とはちと大げさだが、ユロがお飾り大臣でなかったなによりの証拠だ。
「自分自身にウソをつきたくない」。ユロがそう言って同年8月末にニュース専門ラジオで辞任を表明した直接の引き金は、その前夜にあったエリゼ宮(大統領府)での大統領と「狩猟の会」との会合だった。
ユロは動物愛護、環境保護の立場から狩猟に反対だ。だが、大統領はこの会合で、「狩猟」の免許証の価格を400ユーロ(約5万円)から半額の200ユーロに引き下げることを明らかにするなど、大サービスをみせた。ユロには会合の内容にについて、事前に知らせがなかった。会合には有名なロビイストも同席しており、メンツ丸つぶれのユロは顔面蒼白になったと伝えられる。
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