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COP初参加の小泉進次郎環境相はユロになれるか

フランスの環境政策に影響を与えたニコラ・ユロ前環境移行連帯相から学ぶべきこと

山口 昌子 在仏ジャーナリスト

正真正銘の「環境活動家」

 閣僚就任前のユロの肩書は「環境活動家」だ。なんとなくうさん臭い肩書だが、ユロの場合はまさに正真正銘の「環境活動家」。これ以上、ぴったりの肩書は見当たらない。2015年にパリで開かれた「COP21」では、オランド仏大統領(当時)の特使として世界中を飛び回り、会議の意義などについて宣伝した。

 それより以前は、テレビで環境ルポ番組「ウシュワイヤ」(1988~2012年)の企画者兼製作者で、かつ主役だった。1時間半の番組はフランスで大人気だった。

 そう書くと、これまたうさん臭さが付きまとうかもしれない。残念ながらやらせが多かったり、知識がほぼ皆無のタレントが、ハリソン・フォードの「インディー・ジョーンズ」のなりそこないのような“冒険家”風の服装で登場する、日本のテレビ局のルポ番組を想起させるからだ。しかし、「ウシュワイヤ」もまた正真正銘の自然ルポ番組で、それまでフランスでは比較的関心が薄かった環境問題の重要性を訴えた、画期的な番組だった。

 チリのパタゴニアでは氷の割れ目から深度50㍍の深海に潜り、インド洋のマダガスカルでは谷間を何百㍍も宙づりで上昇。ロッククライミングもすればプロペラ機も操縦し、象にも乗る。そして、絶滅寸前の野鳥や昆虫を見つけたり、エスキモーと出会ったり。フランス人は「未知との遭遇」にワクワクしながら、テレビの画面を見つめた。

ブルターニュで聞いたユロの言葉

拡大ニコラ・ユロ環境連帯移行相=2018年8月22日

 2008年に放映された20周年番組は圧巻だった。メキシコのトルコ石色の河川、グリーンランドの氷山、ジャワ島やカトマンズの鋼色の湖、北太平洋のパラオ諸島のクラゲが群生する海底、水質汚染著しいガンジス川などなど、深海や上空からの撮影など変化と迫力に富んだ映像で1時間半にわたり視聴者を魅了しながら、「水は命の起源」とのメッセージを明確に伝え、自然や環境の保護の重要性を強く訴えた。

 当時、新聞社のパリ特派員として、フランスの北西部ブルターニュ地方の小村に住むユロを訪ねたことがある。

 「当初から一貫して自然がテーマだったが、番組開始の20年前は、僕も若かったし、冒険心も強かったので地球のあちこちの珍しい自然を紹介するという部分が強かった。それが番組に取り組むうちに、このままでは自然も生態系も破壊されるという危機感が徐々に募った。人間が海洋や土壌を開発し続けて、あらゆる生態系を破壊すれば、世紀末には森林も現在の50%に減少するだろう。生体系の中に人間が含まれていないとは言えないはずだ」という言葉を、その真摯な口調とともに思い出す。

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筆者

山口 昌子

山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト

元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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