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「クレプトクラート=泥棒政治家」と安倍首相

世界に広がる厳しい目

塩原俊彦 高知大学准教授

 このサイトで、10月23日に「情報操作 ディスインフォメーションの脅威」を公表した。あまり知られていない概念である「ディスインフォメーション」について注意喚起を促したものである。今回は、「クレプトクラート」という言葉をもっと人口に膾炙させるべく、安倍晋三首相がクレプトクラートであるという話を展開したい。

 「腐敗」問題をもう20年ほど研究している筆者にとって、クレプトクラートは腐敗問題におけるキーワードとなっている。すでに『民意と政治の断絶はなぜ起きた:官僚支配の民主主義』(ポプラ社、2016年7月)、『官僚の世界史:腐敗の構造』(社会評論社、2016年9月)、『なぜ「官僚」は腐敗するのか』(潮出版社、2018年10月)を上梓した。それ以前にも、Anti-Corruption Policies(Maruzen Planet, 2013)という英語の本を刊行している。

拡大桜を見る会で、安倍首相と昭恵夫人をとりかこむ、ケント・ギルバード、有本香、竹田恒泰、百田尚樹、武田邦彦ら各氏=2019年4月13日

「クレプトクラート」とは何か

 拙著『なぜ「官僚」は腐敗するのか』には、「こうして現在、盗賊政治家といった盗人を意味する「クレプトクラート」によって海外に持ち出された資金の返還への関心が高まっているのです」(99~100頁)という記述がある。

 つまり、クレプトクラートは「盗賊政治家」とか「泥棒政治家」を意味している。クレプトクラートは「クレプトクラシー」(kleptocracy)から派生した言葉だ。“kleptocracy”はギリシャ語の「盗賊」を意味するκλέπτης(kleptés)、つまり “thief”に支配や政治を意味する言葉 “cracy”(ギリシャ語の Κράτος[krātos]から派生)がついたものである。

 近年、このクレプトクラートとかクレプトクラシーという言葉が世界中で頻繁に使われるようになっている。しかし、残念ながら日本では、あまり知られていない。クレプトクラートをGoogle検索してみると、最初に筆者が書いた「「クレプトクラート」を退治せよ」というサイトが表示される程度にすぎない。

 クレプトクラシーを検索すると、「泥棒政治-Wikipedia」が最初に表示される(いずれも2019年12月6日閲覧)。クレプトクラシーのほうがやや知られているようだが、それにしても、多くに日本人はディスインフォメーションと同じように、この言葉を知らないだろう。

 たぶん、クレプトクラシーは英国で2006年から始まった「反クレプトクラシー・イニシアチブ」によって知られるようになったのではないか。米国でも2007年はじめに、ジョージ・W・ブッシュ大統領が「クレプトクラシーに対する努力を国際化するための国家戦略」をスタートさせる。不正蓄財のためのタックヘイブを否定し「盗まれた資産」の被害にあった人々に返還するグローバルな能力を高めることで腐敗防止につなげることをねらいとしていた。

 ついで、2010年になると、「クレプトクラシー資産回復イニシアチブ」が創出される。世界中の高いレベルの公的立場にいる人物による腐敗を減らすために司法省の検察官、連邦調査局(FBI)職員、その他執行機関職員が協力して外国の公務員などの腐敗利益を没収する使命をになうことになる。こうして英米でクレプトクラシーという言葉が公文書に使われるようになったことで、その派生語であるクレプトクラートも脚光を浴びるようになったわけだ。

安倍首相はクレプトクラート?

 有名なクレプトクラートと言えば、ウラジーミル・プーチン大統領だろう。実は、筆者自身はマイアミ大学のカレン・ダウィシャによって著された『プーチンの盗賊政治』(Putin’s Kleptocracy)を読んだときにはじめてクレプトクラシーという言葉を強く意識するようになった。おそらくドナルド・トランプ大統領もクレプトクラートと言えるかもしれない。なぜなら彼は週末に頻繁にフロリダ州のゴルフ場に出かけて税金を浪費していると批判されているからだ。

 なぜ安倍首相がクレプトクラートと考えられるかというと、「桜を見る会」に後援会関係者を招待し、公金で飲み食いさせたからである。

 この行為自体は公職選挙法(199条の5の2)にある、「何人も後援団体の総会その他の集会又は後援団体が行う見学、旅行その他の行事において選挙区内にある者に対し、饗応接待をし、又は金銭若しくは記念品その他の物品を供与してはならない」という規定に違反している可能性が濃厚だ。これに加えて、その供与を、血税を使って行わせたという「税金泥棒」の嫌疑が加わっている。まさに、「りっぱなクレプトクラート」と言われても仕方がないのではないか。

 しかも、この泥棒行為の立証を困難にさせるために、内閣府の官僚が招待者名簿を廃棄するといった証拠隠滅行為までしている可能性がきわめて高い。

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筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

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