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小沢一郎「このまま死ねない」そして山本太郎

(25)民主党は役人に「お金がない、お金がない」と言われ終わってしまった

佐藤章 ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

戸別所得補償制度に込めた本当の狙い

 歴史的な役割を終えているにもかかわらず自民党の集票構造にガッチリ組み込まれた土地改良事業の補助金。この無駄金の大半を削って小沢が持って行った先は、農業の自由化に備えた新しい制度、農業者戸別所得補償だった。

 農産物の自由化は避けがたく、欧米諸国が採用しているように、農家への戸別所得補償はいずれ必要になる。その資金に歴史的な役割を終えた資金を持ってくることは実に合理的だ。小沢はこう言っている。

 「財務省の官僚はいろいろなことを言ってもやはり賢明だから、きちんとした論理的なビジョンを持って説得すれば、きちっとした仕事をするんです」

 これこそ本物の「政治主導」の言葉と言えるだろう。予算編成権を政治の側、国民の側に取り戻すというのは、こういうことではなかったか。

――民主党政権のマニフェストに関連して、私が一番印象に残っているのは、農業者戸別所得補償制度です。小沢さん自身がこの制度案を立案して、農水官僚から民主党議員(現国民民主党議員)になった篠原孝さんがまとめました。そして、小沢さんがこれを断行したわけですよね。

小沢 あれは絶対やらなければならないと思ってやりました。

――そして、その財源が圃場整備などの土地改良予算でしたね。

小沢 バッサリ削りました。半分以下にしましたね。

――あれは本当にすごいなと思いました。土地改良事業はとっくに歴史的な役割を終えているのに自民党の集票のために延々と続いていました。そういうことが指摘されているのに、誰も政治的に手をつけられなかったんですよね。それを小沢さんがバッサリやったんで、これを他のところでもやれば予算はすごいことになるな、と思ったんです。戸別所得補償だけはまずやらなければならないというお考えだったんですか。

小沢 そうですね。戸別所得補償と言っても、もっと生産性を重視したものにしようと考えていたんだけど、農水省の官僚の壁があってそうは徹底できなかったですね。政権が続いていればぼくがきちんとしたんですが。本当はもっと大規模に、全国的に農協や自治体も巻き込んでビシッと適地適産にしないとあの制度は完全ではないんです。農水省の官僚だけでできることではないんですね。

 市町村と農協の協力を得て適地適産をする。そのためには、ここで何を作れ、ここでは何を作れ、というふうにある程度指導をしなければなりません。

 いま大豆も小麦も欧米に比べて反別の収穫量は半分ですからね。それで、その反別収穫量を上げて、欧米と同じくらいの収穫になるまで2、3年猶予期間を置こうということです。だから、ぱっといっぺんにはできないけど、何年かかけて努力すれば主要穀物は全部国産できるんです。自給できます。やればできる。

拡大農家の人たちと談笑する民主党の小沢一郎代表=2007年11月1日、宇都宮市

――すごいですね。そして、その先には農産物の自由化があるわけですね。

小沢 TPP(環太平洋経済連携協定)などは駄目です。アメリカのルールですから。だけど、農業に限って言えば、戸別所得補償と自由貿易とは何も矛盾しません。農林水産物自体は全部まかなったからと言ってそれほど金のかかるものではありません。GDPの中で12兆円から13兆円ですから。食糧自給のためには過保護とかそういう問題ではないんです。

――そうですね。

小沢 だから、ぼくは自由化には基本的に賛成だけど、ノンルールの自由化をすると農家はみんな潰れてしまい、食糧は自給できなくなってしまうと言っているんです。もちろん、それでは駄目です。イギリスの産業革命の歴史を見れば、自給体制を作らなければいけないということがわかります。イギリスは一時、食糧自給率が20%から30%に落ちちゃったのが、今は7割になっているんです。ところが、日本は4割を切っているんですよ。

――そうですか。

小沢 あの産業革命で、自給率が落ちて、イギリス社会全体が結果的にうまくいかなくなってしまった。それで農業の自給体制はやっぱり作らなければいけないということで再び自給を目指して政策展開をしたんです。だから、自給体制を作るには、やっぱり最低限の再生産のシステムを作らないと駄目なんです。

――そういうことですね。

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筆者

佐藤章

佐藤章(さとう・あきら) ジャーナリスト 元朝日新聞記者 五月書房新社編集委員会委員長

ジャーナリスト学校主任研究員を最後に朝日新聞社を退職。朝日新聞社では、東京・大阪経済部、AERA編集部、週刊朝日編集部など。退職後、慶應義塾大学非常勤講師(ジャーナリズム専攻)、五月書房新社取締役・編集委員会委員長。最近著に『職業政治家 小沢一郎』(朝日新聞出版)。その他の著書に『ドキュメント金融破綻』(岩波書店)、『関西国際空港』(中公新書)、『ドストエフスキーの黙示録』(朝日新聞社)など多数。共著に『新聞と戦争』(朝日新聞社)、『圧倒的! リベラリズム宣言』(五月書房新社)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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