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難民調査でジェンダーへの配慮

 また、韓国の難民法8条2項には「難民申請者の要請がある場合、同性の公務員が面接をしなければならない。」とある。

 日本では法務省が内部規則として「難民認定事務取扱要領」及び「難民異議申立事務取扱要領」を作成し、事務の取扱いを具体的に定めている。その「難民認定事務取扱要領」で、「申請者が女性の場合は、可能な限り女性の難民調査官に担当させる。」とされているものの、あくまでも出来る限りの「配慮」であり、申請者に選択権があるようには書かれていない。そして性被害などのトラウマを背負っているのは、女性だけとは限らないはずだ。

 2017年3月、性的暴行などを受け、難民申請中だった女性が、東京入国管理局の難民審査で、難民審査参与員から「美人だったから狙われたのか」という質問を受けたとして、代理人弁護士が東京入管に抗議している。難民審査参与員は、法律や国際情勢などに詳しい有識者から選ばれ、難民不認定の審査請求手続きの審理に三人一組で参加し、認定の最終判断をする法務大臣に意見を述べる役割を担っている。けれども参与員の多くが男性であり、女性3人でグループを組むことがそもそも難しいのが現状だ。

 韓国ではこうした制度を築くまで、ピナンをはじめ、多くの支援者や団体の働きかけがあった。民間のNGOだけではなく、学者、市民団体、法律の専門家からなる「国家人権委員会」が、公的機関でありながら政府とは独立した形で実態調査を続けてきたことも大きい。

拡大ソウル市内のモスク。多くの移民、難民の人々の拠点の一つだ

 ただ、これをもってして日韓どちらかが優れている、と安易に伝えたいわけではない。韓国の中でも課題はいまだ多く残されているという。

 難民認定が受けられず、人道配慮による在留許可によって滞在資格を得た人々の立場は脆弱なままだ。労働許可を得ることはでき、今年に入り国民健康保険への加入は認められるなど徐々に改善はされてきているものの、職を得られなかった場合の生活支援は限定的だ。職を得られたとしても、仕事場が変わる度に許可を新たに取らなければならないという手間もある。

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筆者

安田菜津紀

安田菜津紀(やすだ・なつき) フォトジャーナリスト

1987年神奈川県生まれ。Dialogue for People(ダイアローグフォーピープル)所属フォトジャーナリスト。16歳のとき、「国境なき子どもたち」友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。現在、カンボジアを中心に、東南アジア、中東、アフリカ、日本国内で貧困や災害の取材を進める。東日本大震災以降は陸前高田市を中心に、被災地を記録し続けている。写真絵本に『それでも、海へ 陸前高田に生きる』(ポプラ社)、著書に『君とまた、あの場所へ シリア難民の明日』(新潮社)。『写真で伝える仕事 -世界の子どもたちと向き合って-』(日本写真企画)。上智大学卒。現在、TBSテレビ『サンデーモーニング』にコメンテーターとして出演中。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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