牧野愛博(まきの・よしひろ) 朝日新聞記者(朝鮮半島・日米関係担当)
1965年生まれ。早稲田大学法学部卒。大阪商船三井船舶(現・商船三井)勤務を経て1991年、朝日新聞入社。瀬戸通信局、政治部、販売局、機動特派員兼国際報道部次長、全米民主主義基金(NED)客員研究員、ソウル支局長などを経験。著書に「絶望の韓国」(文春新書)、「金正恩の核が北朝鮮を滅ぼす日」(講談社+α新書)、「ルポ金正恩とトランプ」(朝日新聞出版)など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
GSOMIAで日韓を歩み寄らせた米国。次は双方に防衛費分担を強く迫る
関係者の間では「トランプ氏が韓国にGSOMIA延長を働きかけたら、1発で韓国は応じるだろう」という見方が支配的だった。だが、トランプ氏は11月22日にGSOMIA騒動がいったん沈静化するまで、まったくこの問題について触れなかった。
逆に、韓国側はだからこそ、「ハウス・トゥ・ハウス(ホワイトハウスと青瓦台)の関係は大丈夫だ」(金鉉宗氏)と計算していた。「トランプ氏はGSOMIAに関心がないから、破棄しても米韓関係は悪くならない」という読みだった。
だが、逆にトランプ氏が無関心だったことが幸いし、ポッティンジャー氏が自由に動くことができた。米韓関係筋は「トランプ氏はGSOMIAに関心がないから、ポッティンジャー氏の動きにも興味がなかった」と語る。
ポッティンジャー氏は頭の回転が速く、どうすればトランプ氏が怒らないかも熟知している人物とされる。ホワイトハウスが動き始めるタイミングは遅かったし、そのために日韓GSOMIAは失効寸前まで行ったが、最後は関係が良好な国務省や国防総省の願いを聞き入れたポッティンジャー氏の努力が実った。
他方、「日韓GSOMIAが破棄されても構わない」「破棄されても被る損害はごくわずかだ」と強弁していた安倍政権も、ホワイトハウスの前では言いなりになるしかなかった。「ホワイトハウスとの関係を壊してまでGSOMIA失効を傍観することはできない」という政治判断だったのだろうが、「米国の言いなり」という印象も残った。
政府・自民党はGSOMIA失効回避を受け、「パーフェクトゲームだ」と息巻いているが、舞台裏を見れば、何のことはない。自分の意見を最後まで貫き通したわけではないし、国際法的には不安を残しての見切り発車だったのだから、それだけ見ても「完勝」というのはおこがましいだろう。
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