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ポピュリズムの悪循環を断ち切るには

強い官邸とは異なる意見や批判勢力が育ってこその民主主義だ

田中均 (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

高い支持率に依存した強い政権が陥り易い悪循環

 そこで問われる。毎年首相が交代すると揶揄されてきた日本で、安倍第二次政権の7年間の政治の安定は特筆すべきだ。欧米先進民主主義国とは対照的な安定ぶりだ。

 日本には、蓄積された国民の不満が社会を分断し、ポピュリズムが政治の表舞台に出てくることはないのか。

 私は、実は日本でも根強いポピュリズムが長年存在してきたと思う。

 1990年以降のバブルの崩壊、低成長、その結果失われた10年~20年の間に、国民の不満は間違いなく蓄積された。更に敗戦後長く続いた日本の過去の歴史を意識した対外的な低姿勢に人々は不満を募らせ、近隣諸国が大きな成長を達成し台頭してくるのを目の当たりにするつけ、何故もっと主張しないのか、と言うナショナリズムが大きく頭をもたげてきた。

 2009年に政権を握った民主党のリベラルなアプローチはそのような国民の蓄積された不満に応えることは出来なかった。民主党政権にとって代わった安倍政権は、戦後体制からの脱却・主張する外交・アベノミクスを掲げ、国民の不満を見事に吸収した。安倍首相は憲政史上最長の在位期間の首相となった。

 しかし今日、そのようなポピュリズムの弊害が表面に出てきた。高い支持率に依存した強い政権が陥り易い悪循環だ。

拡大臨時国会が閉会し、記者会見に臨む安倍晋三首相=2019年12月9日、首相官邸

 例えば任命した閣僚の不祥事が伝えられると十分な説明を尽すことなく辞任し、国会を長期に欠席するといった事態も容認されている。また、英語民間試験の導入や「桜を見る会」について批判が出た途端に十分な説明責任を尽すことなく取りやめを決定する。その間色々な疑問についても納得いく説明に到底なっていないことは明らかであろう。

 政権にとっては支持率に響かせないようにするという考慮が説明責任を果たす以前に重要と映っているようだ。官僚の側の忖度もますます強くなっているように感じる。

 支持率が大きく落ちることなく、且つ選挙で勝てばそれで良く、その結果さらに権力基盤を固めた政権に対し忖度が働く統治が更に進むという悪循環を繰り返していくという事か。それで国のために真に必要な施策が講じられていくということになるのか。本来議論を尽くすべき成長戦略や社会保障改革、公的債務削減といった課題は置きざりにされているのではないかと言う懸念を持つ。

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筆者

田中均

田中均(たなか・ひとし) (株)日本総合研究所 国際戦略研究所 理事長/元外務審議官

1969年京都大学法学部卒業後、外務省入省。オックスフォード大学修士課程修了。北米局審議官(96-98)、在サンフランシスコ日本国総領事(98-2000)、経済局長(00-01)、アジア大洋州局長(01-02)を経て、2002年より政務担当外務審議官を務め、2005年8月退官。同年9月より(公財)日本国際交流センターシニア・フェロー、2010年10月に(株)日本総合研究所 国際戦略研究所理事長に就任。2006年4月より2018年3月まで東大公共政策大学院客員教授。著書に『見えない戦争』(中公新書ラクレ、2019年11月10日刊行)、『日本外交の挑戦』(角川新書、2015年)、『プロフェショナルの交渉力』(講談社、2009年)、『外交の力』(日本経済新聞出版社、2009年)など。

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