山口 昌子(やまぐち しょうこ) 在仏ジャーナリスト
元新聞社パリ支局長。1994年度のボーン上田記念国際記者賞受賞。著書に『大統領府から読むフランス300年史』『パリの福澤諭吉』『ココ・シャネルの真実』『ドゴールのいるフランス』『フランス人の不思議な頭の中』『原発大国フランスからの警告』『フランス流テロとの戦い方』など。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
恵まれた老後を保障するフランスの年金制度。政府の改革案を巡り地下鉄、国鉄がスト。
国鉄の場合、自慢のフランス版新幹線(TGV)や在来線が「何本に1本」運転されるかがニュースになる。クリスマス休暇を利用した遠出を取りやめたり、列車を諦めて自転車旅行に切り替えた組も多かったという。観光客でごった返すシャルル・ドゴール国際空港では、テレビニュースのインタビューに、「フランス名物を体現できた」「フランスの本当の姿を見ることができた」など、負け惜しみ?のコメントも目立った。
今回のストの目的は、年金制度改革に対する反対だ。フランスでは、年金は社会保障制度の枠組みで、健康保険、失業保険と共に、給料から負担金が毎月差し引かれる。だから、日本のように、「年金の負担金の支払いを忘れた」ということはあり得ない。
現行のフランスの定年は原則62歳。約40年働くと、給料の最高時の約8割が支給される。日本だと、年金だけではとても暮らせない。ましてや、晩婚で就学児童がいたり、住居のローンが残っていたりすれば、「第2の職場」を必死に探さなければならないが、これだけ貰えれば、そんな必要もない。
このように恵まれた老後が保障されているので、一刻も早く定年を迎え、老後の生活を楽しみたいというのが、フランス人の一般的な人生観だ。文字通りのハッピー・リタイアである。
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