メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

電子請願を無視する日本政府

笑止千万の「デジタル・ガバメント実行計画」の閣議決定

塩原俊彦 高知大学准教授

電子請願で請願権を実のあるものに

 国会では、議員の紹介のない請願は「陳情」として受理されている。ほかに、行政機関への請願もある。この事後処理は各機関の判断に任されており、調査・処理報告などの義務がないために、「誠実に処理」(請願法第五条)とは言い難い。

 したがって、インターネットで各省庁のサイトにアクセスしてみても、まったくといっていいほど、請願内容、審査結果などを閲覧することはできない状況が続いている。

拡大「非核平和都市宣言」を求めて福岡市議会に請願書を提出する高校生=2018年6月13日

 他方で、地方議会の場合、国家機関に意見を表明する手段として、意見書の提出制度がある。地方自治法第九九条に基づいて行われているものだ。地方自治体への請願については、地方自治法第百二十四条により、「普通地方公共団体の議会に請願しようとする者は、議員の紹介により請願書を提出しなければならない」とされている。

 同第百二十五条には、「普通地方公共団体の議会は、その採択した請願で当該普通地方公共団体の長、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、地方労働委員会、農業委員会又は監査委員その他法律に基づく委員会又は委員において措置することが適当と認めるものは、これらの者にこれを送付し、かつ、その請願の処理の経過及び結果の報告を請求することができる」とされている。

 しかし、これだけでは、請願の処理やその内容について十分に知ることはできないだろう。しかも「議員の紹介により」という条件をつけて請願を陳情と区別するという悪弊が地方自治でも踏襲されている。

 つまり、国民のきわめて重要な権利である請願権がほとんど機能しないまま放置されているのである。だからこそ、筆者は拙著のなかでつぎのように書いておいた。

 「請願制度を改革して電子請願をできるようにすることが必要だ。行政手続法と同じように、請願手続法を制定し、そのなかで電子請願もしっかりと位置づけ、受理と審査の手続きを法的に明確化し、国民の声が適切に届けられるような仕組みづくりを急がなければならない。

 具体的には、電子署名による個人の明確化をどう進めるかが重要な論点となるが、すでに電子請願を導入している各国の状況を学びながら試行錯誤する姿勢が求められている。さらに、行政だけでなく、立法や司法についても、請願手続法を適用し、せっかく憲法が広範囲に認めている請願権を実のあるものにすべきだろう。」

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

塩原俊彦

塩原俊彦(しおばら・としひこ) 高知大学准教授

1956年生まれ。一橋大学大学院経済学研究科修士課程修了。学術博士(北海道大学)。元朝日新聞モスクワ特派員。著書に、『ロシアの軍需産業』(岩波書店)、『「軍事大国」ロシアの虚実』(同)、『パイプラインの政治経済学』(法政大学出版局)、『ウクライナ・ゲート』(社会評論社)、『ウクライナ2.0』(同)、『官僚の世界史』(同)、『探求・インターネット社会』(丸善)、『ビジネス・エシックス』(講談社)、『民意と政治の断絶はなぜ起きた』(ポプラ社)、『なぜ官僚は腐敗するのか』(潮出版社)、The Anti-Corruption Polices(Maruzen Planet)など多数。

塩原俊彦の記事

もっと見る