平成時代にいっそう進行した天下りという宿痾。高市早苗総務大臣には徹底調査を期待
2019年12月28日
それは、まるで裁判官が検討中の判決内容を、一番教えてはならない被告に逐一報告をしていたような話だ。
周知のとおり、日本郵政グループが、傘下のかんぽ生命の不正販売問題で大きく揺れている。監督官庁である総務省には、厳しい行政処分に踏み切ることが期待されていた。ところが、その行政処分案の検討状況が、処分される対象である日本郵政グループに筒抜けになっていたのだ。
「漏えいルート」は、総務省の事務方のトップである鈴木茂樹事務次官から、日本郵政の“最強実力者”と言われる鈴木康雄上級副社長に対してであった。この漏えいに気付いたのは、なんと高市早苗総務大臣だった。官僚とは一味違う政治家特有の鋭敏なカンが働いたのだろう。
不正販売問題が明るみになってから、総務省は大臣や事務次官など少数の幹部を中心に日本郵政側に対する行政処分を検討していたが、検討の中身が漏れているのではないかという疑念が、高市大臣の中に広がっていったという。メディアの報道によれば、外部から入った情報提供が内部監察に踏み切った理由だというが、大臣は検討の場での事務次官の口ぶりや目線などで、すでに異常を察知していたのだろう。
日本郵政の鈴木康雄副社長は、総務省の事務次官経験者である。郵政民営化前の旧郵政省の官僚であり、やはり旧郵政省の出身で今年7月に次官に就いた鈴木茂樹氏とは、いわゆる「先輩」「後輩」の関係だ。
日本郵政の社長に昇格するのではないかという見方もあった鈴木副社長は、菅義偉・内閣官房長官との「近さ」もささやかれ、郵政グループ内で強力な権限を握っていたという。「怖くて逆らえる人がいなくなった」(日本郵政幹部)とも言われる(12月21日朝日新聞朝刊)。
これに対し、鈴木康雄次官は「調整型で気配りもできる人」として、省内で信頼されてきたという。幹部人事をめぐってはOBが発言力を持つことが多く、事務次官に抜擢された恩をOBである鈴木副社長にも感じていたのであろう。
だが、いかなる理由があれども、今回の漏えいは許されるべきではない。それどころか、“天下り問題”の核心をまざまざと示している。
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