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2020年 野党の課題/下

地域に根差し、風に左右されない陣地を築け

木下ちがや 政治学者

政権が恐れる「手を組むはずがない者同士の団結」

 日本共産党は30万人の党員を抱え、100万以上の「しんぶん赤旗」の読者をもち、2667人の地方議員がおり、全都道府県の地域に地区委員会と支部をくまなく配置している。さらに共産党と連携する労働組合、医療団体、中小企業団体が無数に存在している。

 この組織力は、これまで小選挙区制度によって封じ込められてきた。共産党が単独で小選挙区を勝ち抜ける選挙区はなく、野党共闘以前は全敗を繰り返してきた。したがって自公vs民主の二大政党制化がすすんでいたゼロ年代の日本政治では、ほぼ無視されてきたのだ。

 しかし、2015年に野党共闘がはじまって以後、他の野党は共産党の実力に目を見張ることになる。地区委員会があることで県全体にわたるネットワークと動員力を有し、集会や街頭演説には千人単位の人が常時結集し、ビラ撒きやポスティングをこなす活動家が大量にいる。これは、全県的なネットワークをもたず、後援会、労組だのみの民主党系政治家にはとても真似できないものだ。

 さらに野党共闘がすすむなかで、日本共産党に対しては、いったん闘うと決めたら方針を守りぬくという信頼感が生まれていった。参院選のある1人区では、共産党は統一候補を全力で支援したが、同党のメンバーが中心に作成した選挙ビラには、共産党の名前は一文字もでてこない。ひたすら統一候補を支えることだけに徹していたのだ。こうした態度も、個人後援会中心に活動してきた民主党系政治家にはなかなか真似できないだろう。

拡大共産党第27回大会。壇上には志位和夫委員長(前列中央)と並び、民進党の安住淳代表代行、自由党の小沢一郎代表、社民党の吉田忠智党首ら野党の党首級がそろった=2017年1月15日、静岡県熱海市

 小沢一郎はかつて日本共産党を「もっとも近代的な政党である」と評していた。小沢一郎ははやくから共産党の組織力に注目し、2017年には共産党大会に出席して連携をアピールしていた。だが、組織力に注目したとして、共産党を選挙のときだけの単なる「踏み台」に利用するだけなのか、それとも、野党各党の特性を最大限活かす技法を練り上げていくなかで共産党と日常的な活動をともにしていくのかでは、野党のあり方は大きく変わっていくだろう。

 中村喜四郎はインタビューのなかで、「小沢さんは確信犯的に野党をやっているが...中村は真剣に野党をやっている」と述べている(注4)。「確信犯的」の含意はともかく、真剣に野党をやるなら、どちらの道を選ぶかはおのずと明らかだろう。

 国民、共産、社民、そして「連合」の組織力をいかしつつ、それと立憲民主党が潜在的にもつ無党派層への訴求力をどう有機的に結合し、役割分担していくのか。昨年8月の埼玉県知事選では、野党系大野ともひろ候補の選対事務局長を務めた「連合」電力総連の幹部と、「全労連」傘下の埼玉県労連の委員長が、勝利のあとに固い握手を交わしていた。政権与党が最も恐れているのは、こうした「本来手を組むはずがない者同士が団結する」ことだ。

(注4) 常井健一著『無敗の男-中村喜四郎全告白』文芸春秋、2019年、290頁

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筆者

木下ちがや

木下ちがや(きのした・ちがや) 政治学者

1971年徳島県生まれ。一橋大学社会学研究科博士課程単位取得退学。博士(社会学)。現在、工学院大学非常勤講師、明治学院大学国際平和研究所研究員。著書に『「社会を変えよう」といわれたら」(大月書店)、『ポピュリズムと「民意」の政治学』(大月書店)、『国家と治安』(青土社)、訳書にD.グレーバー『デモクラシー・プロジェクト』(航思社)、N.チョムスキー『チョムスキーの「アナキズム論」』(明石書店)ほか。

※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです