メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

news letter
RSS

全力で投げて打つ。日々進歩する南スーダン野球

野球人、アフリカをゆく(19)南スーダン野球の未来を開く男との出会いが

友成晋也 一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事

いつか本格的な野球場で野球を楽しませたい

 2018年9月にゼロから始めた南スーダン野球団は、4カ月目を迎えていた。徐々に野球らしくなってはきたが、野球がゼロだったタンザニアにわずか7年で「ダルエスサラーム甲子園球場」ができ、大会が開催されるまでになる発展ぶりを見てきたばかりの私からすると、タイムマシーンに乗って7年前に戻ってきたような、「デジャブ」を見ているような錯覚を覚える。

 野球と出会ったばかりの南スーダンの子供たちにも、いつか本格的な野球場で、思う存分野球を楽しませてあげたい。そのためにも、一回一回の練習で、野球の魅力を少しでも多く伝えたい。それももっと多くの子供たちに――。そんな思いがふつふつと湧き上がる。

 そんな思いを胸に秘めながら、いつも通りキャッチボールから始めたあと、いったん全員集合させ、チーム分けをする。新たに加わったダイス以外にも、徐々に在留邦人の参加が増え始めていた。南スーダンは危険地であるため、在留邦人のほとんどは、日本大使館員かJICA関係者、あるいはUNDP(国連開発計画)やUNICEF(国際連合児童基金)、UNMISS(国際連合南スーダン派遣団)など国連機関に所属するスタッフだ。

 こうした方々が参加してくださるのは大変ありがたい。なんせ野球を見たことがない子供たちが取り組むのだ。ルールも十分わかっておらず、しかも毎回初めての参加者がいるので、まださほど大差ないとはいえ、経験と知識の個人差をカバーするのは大変だ。日本人であれば、たいていの人は野球のルールなど最低限のことは知っているので、ある程度であれば、誰でもなんらかの指導をすることができる。

「バットって思い切り振っていいんですか?」

拡大練習試合。右手前がエドワード。中央にダイス。

 かくして、在留邦人が4、5人入って紅白戦が始まった。はじまりは、もちろん整列して礼。日本人は野球経験者でなくても、日本の甲子園大会などで見慣れているため、問題なくすぐにスムーズに溶け込めている。

 日本からきた在留邦人は、幸いにもサッカーやテニス、武道など、本格的にスポーツを経験した人が多く、試合が始まると、捕る、投げる、打つを、どれもそつなく、という以上にできてしまう。特にピッチャーは打たせることを重視しているため、下投げだ。これなら大抵の日本人は打てる。

 すると、試合途中に打席に入った一人の南スーダン人の選手が、両チームのキャッチャー役を務める私に尋ねてきた。

 「バットって思い切り振っていいんですか? あんなに遠くに飛ばしてもいいものなんですか?」

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

友成晋也

友成晋也(ともなり・しんや) 一般財団法人アフリカ野球・ソフト振興機構 代表理事

中学、高校、大学と野球一筋。慶應義塾大学卒業後、リクルートコスモス社勤務を経てJICA(独立行政法人国際協力機構)に転職。1996年からのJICAガーナ事務所在勤時代に、仕事の傍らガーナ野球代表チーム監督に就任し、オリンピックを目指す。帰国後、2003年にNPO法人アフリカ野球友の会を立ち上げ、以来17年にわたり野球を通じた国際交流、協力をアフリカ8カ国で展開。2014年には、タンザニアで二度目の代表監督に就任。2018年からJICA南スーダン事務所に勤務の傍ら、青少年野球チームを立ち上げ、指導を行っている。著書に『アフリカと白球』(文芸社)。

友成晋也の記事

もっと見る