課題山積の中、「解散」できない安倍首相は影響力を維持するためどう動くのか?
2020年01月01日
2020(令和2)年の日本政治はどうなるか。最大の焦点は安倍晋三政権の行方である。首相主催の「桜を見る会」をめぐる不祥事やカジノを含むIR(統合型リゾート)関連の汚職が相次ぐ中、自民党総裁の任期満了(21年9月)を控えて「死に体」になっていくのか。それとも巻き返しの手はあるのか。永田町・霞が関の底流を探り、新年の政治動向を占ってみる。
19年12月9日夕。安倍首相は臨時国会の閉幕にあたって記者会見した。首相側近の一人は、その時の「異変」を感じ取っていた。
安倍首相は、衆院の解散・総選挙について問われ、「国民の信を問うべき時期が来たと考えれば、解散・総選挙を断行することに躊躇(ちゅうちょ)はない」と断言した。時の首相が解散に「躊躇はない」と語れば、政界には衝撃が走るはずだ。しかし、安倍首相の発言に記者会見場では驚きの声もなく、与野党からも目立った反応が聞かれなかったのである。
この「異変」の理由は何か。
「首相が解散をちらつかせても、現実味がないと思われているのだろう」と、この側近議員はつぶやいた。
確かに当面の政治スケジュールの中で、安倍首相が解散に踏み切れるタイミングを見いだすのは難しい。
通常国会は1月20日に召集され、6月17日まで150日間に及ぶ。景気対策を盛り込んだ19年度の補正予算案から始まり、100兆円を上回る20年度予算案と関連法案の審議が続く。途中で衆院が解散されれば、予算案も法案も廃案になってしまう。景気への影響は計り知れない。だから、通常国会が始まれば、その途中での解散は簡単ではない。そして、安倍首相側から財務省に出された指示は、「通常国会召集は20日でよい」だった。
安倍首相に早期解散の考えはない――。20日召集が確定したことで、与野党の国会議員や霞が関の官僚たちは、そう思い定めた。
衆院の解散は、首相の自民党総裁4選問題と密接にからむ。自民党の閣僚経験者の解説は説得力がある。
「安倍さんが4選を狙うなら、解散・総選挙に打って出て勝利し、総裁は3選までと定めている党則の改正をめざすだろう。一方、4選を狙わないなら解散をする必要がない。いまの安倍さんに4選をめざす覇気は感じられない。そもそも、抜本的な社会保障改革も北方領土問題も憲法改正も進展のめどが立たず、4選に向けた旗印もない。だから、安倍さんによる解散もない」
通常国会は衆参両院の予算委員会の審議から始まる。野党の論客が次々と登場し、首相に襲いかかる。その時々のホットな問題が取り上げられる。今回はもちろん、「桜」と「カジノ」だ。
招待者には、マルチ商法で消費者庁から行政指導を受けていたジャパンライフの元会長も含まれていた。「首相からの招待状」を宣伝に使って勧誘していた。その経緯は不明で、安倍首相の説明責任が問われている。会の実務を担当する内閣府は招待者名簿を「遅滞なく破棄した」と繰り返す。都合の悪い文書は捨てるのかという追及が待っている。
桜を見る会は安倍首相の主催行事であり、予算委では安倍首相本人が追及の矢面に立たざるを得ない。安倍が野党の質問に立ち往生したり、興奮して激高したりすれば、テレビはその映像を繰り返し放映する。政権のダメージとなることは間違いない。
秋元司・元内閣府副大臣(自民党を離党)がカジノ誘致をめぐって収賄容疑で逮捕された問題も、安倍政権にとってダメージとなる。アベノミクスの「成長戦略の目玉」と位置づけられてきたカジノは、政権与党の公明党内に慎重論がある中で、2016年12月に関連法が強引に可決された。18年7月には実施法も整備され、全国の候補地から3カ所がカジノを含むIRに選定されることになっている。
それでも世論のカジノ反対論は根強く、例えば横浜市では、カジノ推進にカジを切った林文子市長のリコールにも発展しそうな雲行きである。そうした中で、東京地検特捜部が強制捜査に着手した。「カジノ利権」に対する不信が増幅され、安倍政権の「カジノ解禁」への不信にまでつながりかねない雲行きだ。
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